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脂肪性肝疾患について

2018年5月31日放送2018年6月7日放送

2018年5月31日放送

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2018年6月7日放送

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5月31日放送内容(放送内容 資料はこちら

脂肪性肝疾患とは、肝細胞に中性脂肪が沈着し肝障害を生じた状態の総称で、日本人の脂肪性肝疾患はおおまかに、アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に分類されます。さらにNAFLDは病態の進行することが稀である非アルコール性脂肪肝(NAFL)と肝細胞変性・壊死、炎症や線維化を伴い肝硬変や肝臓がんが生じる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分類されます(放送内容 資料:図1)。

従来の肝臓病は、B型肝炎、C型肝炎が主体でしたが、近年新しい抗ウイルス薬が開発され、肝炎鎮静化や血中ウイルスを消失できるようになってきました。1991年にはC型慢性肝炎や肝硬変から発症する肝細胞がんが約70%を占めていましたが、近年では徐々にB型・C型肝がん以外が増加しており、その多くはNASHを基礎疾患としています(図2)。

アルコールを多飲すれば肝障害が生じ、いずれ肝硬変を生じ、肝臓がんのリスクが高くなりますが、NAFLDは飲酒せずともアルコールと同様な脂肪滴沈着を伴う肝組織像を呈し、その病因には遺伝的素因に肥満や糖尿病などのいわゆる生活習慣病の関連が指摘されています。

日本における肥満(BMI≧25㎏/㎡)人口は1980年ごろから徐々に増加し、現在では男性1300万人、女性1000万人に上ると言われています。男性は20歳過ぎから女性は閉経後に肥満の頻度が増加します(図3)。

内臓脂肪蓄積を基盤とし、糖代謝でインスリン感受性が低下し反応性に高インスリン血症(インスリン抵抗性)と、脂質異常症、高血圧、糖尿病などを包括した概念がいわゆるメタボリックシンドロームです。

肥満患者はBMI上昇に伴いNAFLDの有病率も高くなり(図4)、健診受診者の男性約40%、女性約20%にみられます。またNAFLDに、脂質異常症約50%、高血圧約30%、空腹時高血糖約30%が合併すると言われています。つまりNAFLDもメタボリックシンドロームの一つと考えられます。

6月7日放送内容(放送内容 資料はこちら

さて、メタボリックシンドロームの各々の疾患は心血管イベント発症の独立した危険因子であり、互いに合併して相乗的な危険因子となります(図5)。NAFLDも他の疾患同様に心血管イベント発症の危険率が高くなります。

またNAFLDは慢性腎臓病や睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症などの合併、さらにインスリン抵抗性は炎症性サイトカイン産生増加や酸化的ストレスの悪化を生じ肝臓がん、すい臓がん、大腸がんなどの悪性腫瘍発症との関連が指摘されています。

NAFLDの診断は脂肪滴を伴う肝細胞の割合が20~30%以上しめると超音波検査で正常の肝臓に比し白く見えることやCT検査で肝臓が黒く見えることで脂肪肝と診断できます(図6)。

NAFLからNASHへの移行には様々な病因が同時並行して関与していると考えられますが、その鑑別は難しく、年齢やAST/ALT比、血小板数、線維化マーカーや超音波、CTなどの画像診断、特殊な超音波やMRIなどを用いて肝臓の硬さを測定し総合的に推測しますが、最終的には入院の上に肝生検を施行し組織像で診断が必要となります(図7、8)。

NAFLDの治療は、内臓脂肪蓄積によるインスリン抵抗性の改善と併発する脂質異常症、高血圧、糖尿病などの治療が主体です。生活習慣の改善及び食事・運動療法は基本で、体重を7%減らせばNAFLDが改善し、運動療法は体重減少を伴わなくともNAFLDが改善するのでないかと言われています。薬物療法にはインスリン抵抗性改善や抗酸化療法などがあります。またBMI35以上の高度肥満患者には、外科療法として腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険適応となっています(図9)。

脂肪肝を指摘されたら症状もないし食べ過ぎだからと放置せずに、生活習慣の改善や併存疾患の治療をきちんとすることが、心筋梗塞や脳・血管疾患ならびに悪性疾患などの発症予防にもつながります。きちんと医療機関を受診し治療を継続することを勧めます。

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