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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

こどもの風邪

2018年7月26日放送2018年8月2日放送

2018年7月26日放送

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2018年8月2日放送

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7月26日放送内容(放送内容 資料はこちら

今回は、こどもの風邪についてお話をします。

よく「風邪をひいた」といいますが、「ひく」と表現する病気は風邪ぐらいでしょう。
昔中国や日本では「邪気をはこぶ気の流れや悪霊を体に引き込んでしまった」と考えたといわれています。風邪が咳などの飛沫で広がる様子をよく表しています。
現在でも大人で年2・3回、こどもでは5・6回、あるいはそれ以上風邪をひくといわれています。今も昔も身近な病気であることに変わりありません。

風邪の原因の9割はウイルスです。
主な症状はご存じのとおり、喉の痛み・くしゃみ・発熱などで始まり、咳・鼻水と続き大抵は10日程で治ります。しかし時には咳が長く続くことや、急に重い咳に苦しむこともあります。

実は風邪ウイルスにはいろいろ種類があります。
ライノウイルスが最も多くみられますが、他にもコロナ、パラインフルエンザ、RS、ヒトメタニュウモウイルス等が原因となります。各々流行する年齢、季節は異なります。

特に小児では、ウイルスにより症状が異なります。
例えば、ライノウイルスは1年中検出され、症状は軽く何度も感染を繰り返す、ごくありふれたウイルスです。しかし非常に長い期間、咳に悩まされることがあります。また幼少期から感染を繰り返すことで、基礎疾患がある場合は、喘息発症の一因になるとの指摘もあり、結構やっかいなウイルスであることが分かってきました。

また毎年、冬から春にかけて、RSウイルスの流行がみられます。
大人や学童では症状は軽いものの、乳児では呼吸困難を伴い重症化することがあります。

この対照的な経過をたどる2つのウイルスを例に挙げましたが、たかが「風邪」といっても特に乳児にとっては、急性にも慢性にも注意が必要です。

8月2日放送内容(放送内容 資料はこちら

今回は、風邪の対策についてお話をします。

たくさんの種類の風邪薬が市販されていますが、薬を使えば早く治るのでしょうか。
残念ながら風邪ウイルスに直接作用する薬は、今のところありません。つまり風邪を早く治す特効薬はない、ということです。

抗菌剤も風邪ウイルスには効きません。
抗菌剤は細菌にしか効果がありません。細菌感染症を危惧するあまり抗菌剤が多用されてきた歴史があり、結果的に耐性菌を増やしてしまったという問題に直面しています。私たち医師には、不要な抗菌剤を使わない選択が求められています。

では、風邪はどうして治るのでしょうか。
風邪が治るのは、免疫の力です。あくまで風邪は薬が治すのではなく、自分の力で治るのです。
風邪の辛い症状は、実はウイルスと闘うために体内で作られた免疫物質が起こしています。風邪ウイルスと戦っている証拠です。風邪薬はこの苦痛を軽減してくれます。睡眠、食欲などを保つ為には有用です。
しかし安静を保たなければ、かえって風邪を長引かせることになります。

小児科外来では予防接種の普及により重篤な急性感染症が減った半面、長引く鼻水・咳・喘鳴に苦しむ小児が増えている印象があります。風邪ウイルスの反復感染も一因です。
保育所に通うこどもが増え、園児の低年齢化が進んでいます。集団生活では、風邪をひくこともあるでしょう。ご家族からは「早く登園できるようにお薬をください。」との要望があります。
しかし、まず必要なのはお薬ではなく免疫力を高めること、つまり十分な安静と栄養です。
その為には、病状に合った環境で看護する、集団保育を控えることも必要です。ご家庭の都合で診てあげられない場合、病児・病後児保育室を利用することも良いと思います。

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