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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

糖尿病網膜症

2018年8月9日放送2018年8月16日放送

2018年8月9日放送

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2018年8月16日放送

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8月9日放送内容(放送内容 資料はこちら

世界保健機関(WHO)によると2017年の成人の糖尿病患者数は4億2500万人に達しました。1980年の1億800万人から4倍近くに増加しました。「糖尿病がもたらす脅威に対抗し、糖尿病とともに生きる人々へのケアを向上させるために、世界中の人々が力を合わせる必要があります」とWHOの事務局長は、声明を発表しました。
WHOがまとめた報告書「糖尿病についてのグローバルな報告」によると糖尿病の有病率は、男性では1980年には4.3%でしたが、2014年には9%に上昇しました。女性でも、1980年の5%から2014年の7.9%への上昇がみられました。

日本では、平成28年の国民栄養健康調査において、糖尿病が強く疑われる方は約1000万人で、成人(20歳以上)男性の16.3%、女性の9.3%を占めています。また、糖尿病の可能性が否定できない方は約1000万人です。男女別では、男性が12.2%、女性が12.1%でした。

糖尿病患者さんの約76.6%が通院中ですが、約23.4%は治療が行われていません。特に40歳代男性では、治療を受けている割合が他の年代より低いという結果でした。

糖尿病の合併症は、健康寿命の短縮につながり、医療費の増加をきたします。
合併症では、網膜症、腎症、また神経障害が代表的です。眼科的には、網膜症、虹彩炎、白内障その他、角膜上皮障害、緑内障、視神経症、眼筋麻痺などがあります。1番問題になるのが、網膜症による眼底出血です。成人の新規失明者では、糖尿病網膜症は緑内障に次いで、第2位であり、年間3000人もの患者さんが失明しています。
世界の35の前向き研究の2万3000人のデータ解析では、糖尿病患者さんの34.6%に網膜症が生じています。網膜症のなかで視力の低下の恐れが強い方は、全患者さんの10.2%を占めています。

8月16日放送内容(放送内容 資料はこちら

目や腎臓の合併症の原因は、主に細い血管の障害といわれています。
これを予防するには、厳しいレベルの血糖のコントロール(HbA1c7.0%以下)が必要です。糖尿病網膜症は、早期に血糖や血圧コントロールなどの内科的治療が必要です。

眼科では、眼底を定期的に経過観察して、重症化した場合、網膜光凝固・硝子体手術・特殊な薬剤の眼局所への投与などの治療が行われています。眼科検査のトピックスとしては、超広角眼底検査では、瞳を拡げず眼底検査ができます。
また、光干渉断層計検査では改良が進み、眼底の立体的な構造の詳細な状態がわかり、さらにアレルギーが生じることがある造影剤を使わずに、安全に網膜の血管の状態が記録出来るようになりました。

治療のトピックスとしては、今までより痛みの少ないレーザー治療や薬剤を併用しての網膜光凝固などがあります。硝子体手術では併用薬剤を併用することや手術器具の進化、手術手技も洗練されてきています。
しかし、これらの治療を総動員しても網膜の神経細胞は再生することができないために患者さんの全てが、視力回復するわけではありません。
糖尿病が重症化する前に適切な治療が必要であり、網膜症を合併させないためにも内科を受診していない方や、糖尿病治療を中断している方々へは、内科受診をすすめ、眼科での定期的検査・治療が不可欠です。
このように、内科と眼科での経過観察・治療は、糖尿病患者さんの生活や視力の質の向上につながり、ひいては国民医療費の増加を抑制すると思われます。

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