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乳がん検診の最近の話題

2017年11月2日放送2017年11月9日放送

2017年11月2日放送

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2017年11月9日放送

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11月2日放送内容 資料はこちら11月9日放送内容 資料はこちら

1)乳がんの現状

従来、乳がんは日本人には稀な病気とされていましたが、近年は顕著に増加しています。
国立がん研究センターの統計では、2016年、乳がんにかかる方は約9万人、死亡数は1万4千人とされ、1990年と比べて倍増している、女性が最もかかりやすいがんです。さらに40代にピークがあり、他部位のがんに比較して若い働き盛りの年齢層がかかりやすいのも乳がんの特徴です。
また、早い時期に見つけて適切な治療を受ければ、治る可能性が高いがんでもあります。2cm以下で転移のない場合、5年生存率は99%といわれています。

2)がんの予防

がんの予防には一次予防と二次予防があります。
一次予防とは環境や生活の改善によって原因を除去することで、肺がん予防における禁煙などがこれに当たります。
最近乳がんが増加している原因には

  1. 食生活の欧米化、アルコール摂取の増加、肥満の増加。
  2. 女性ホルモン(エストロゲン)は乳がん発生のリスク因子ですが、女性の初潮が早く、閉経が遅く、また独身者・高齢出産が増えるなど乳腺がエストロゲンにさらされる時間がのびたこと。
  3. 環境の悪化。
    排気ガスや殺虫剤など環境中のエストロゲン類似物質の増加。
    また、乳がんと放射能の関係も指摘されています。例えば米国では、乳がんの死亡率が、居住する地区(郡)の所在地と、通常運転時の原子炉の距離に相関しているとの研究があります。また、1986年のチェルノブイリ事故後、東北などで乳がんが増加したことが政府の統計で報告されています。

3)マンモグラフィによる検診

発生したがんを検診などで早期に発見するのが二次予防です。
検診の主力は、乳房のX線撮影(マンモグラフィ)です。
マンモグラフィで軟らかい組織に埋まったがんの塊や石灰化を写すためには、乳房を圧迫して撮影する専用の装置が使われます。圧迫時の痛みは熟練した診療放射線技師が担当すれば、通常は心配されるほどではありません。
検査による被曝も問題になりますが、マンモグラフィによる吸収線量は実効線量で0.05〜0.15mSvです。これは宇宙線、土、食物中の放射能など自然放射線の年間約2.40mSv、太平洋横断の旅客機であびる宇宙線0.038mSvとくらべて大きな量とはいえません。ただし、精度管理を行った専用装置で資格のある専門家が撮影することや無用な検査の重複を避けるなどの注意が必要なことは申すまでもありません。

4)高濃度乳房と超音波検査

母乳を作る乳腺組織は、X線皮下や乳房内の脂肪よりも白く写ります。
年齢が進むにつれて乳腺は次第に脂肪に置き換わっていきます。
乳腺組織が白い高密度乳房では、中に埋まったがんの塊も写りにくい傾向があります。マンモグラフィ上、乳腺組織は密度が高い順に「高濃度」、「不均一高濃度」、「乳腺散在」、「脂肪性」の4段階に分類されます。
密度が高いほどマンモグラフィにはより白く写り、同じく白く写るがんは、より見つけにくくなります。
一般に高濃度乳房は40代までの若い人でしばしば見られます。

超音波検査は魚群探知機と同じ原理で、組織から反射する超音波を画像化します。主にしこりの検出に優れており、放射線の被曝もありません。
特にマンモグラフィでがんが写りにくい高濃度乳房で有効です。検査装置がマンモグラフィより安いのも利点です。ただし超音波診断にも不利な点があります。がんで見られる微細な石灰化がマンモグラフィより検出しにくいこと、がんでない良性のしこりを拾い上げすぎる傾向があること、検査に時間がかかること、および検査の精度管理すなわち検査担当者や装置のレベルを客観的に評価して保証する方法が難しいのが欠点です。
現在、高濃度乳房の多い若年者(40代女性)を対象に乳がん検診における超音波検査併用の有効性を検証するため、全国的な大規模比較試験が行われています。
私どものクリニックで6年間に経験した乳がん180例のうち触診、マンモグラフィいずれでも検出できず、超音波だけで診断できた12例を検討しました。12例の年齢は40歳から71歳で、そのうちの8例が60歳以上。また、半数の6例では、背景の乳腺は散在性でした。すなわち高齢者や散在性乳房でもマンモグラフィでは写らず、超音波のみで写る乳がんがあることがわかります。
このようにマンモグラフィのみでの検診は不完全ではありますが、対策型検診、すなわち自治体などによる集団検診に超音波を取り入れるべきか否かの政策決定には、それによって得られる効果が必要な費用に見合ったものであるとの保証が必要です。
救命率を含めた検診の利益と上記の費用や弊害の得失を見極めるためにはしばらく時間がかかると思われます。
人間ドックなどの任意型検診では、事情が異なります。
例えば会社検診などでマンモグラフィと超音波のいずれかを選べる場合、両者を交互に受けるのも一案と思われます。
以上、乳がん検診に関わる最近の話題をお話しいたしました。

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