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その12:取材を終えて

浜子先生:さて、コユリ記者さんの取材も無事終わりましたね。どうでした?

コユリ:やだ、浜子先生ったら、私が取材されているみたいじゃありませんか。でも、とても勉強になりました。女性医師の皆さんはまじめに仕事やご家庭に取り組んでおられ、頭が下がります。以前は、何とかしなければという論調はあったものの、ちっとも具体的な方策のないことが記事書いてて歯がゆかったんですが、女性医師の先生方から直接お話をうかがうことで、問題点がはっきりしてきました。問題点が明らかになれば必ず解決策が見つかるはずです。

浜子先生:そうですね。ではコユリ記者さんが見つけた問題点はなんですか?

コユリ:やはり、女性医師の人生設計の中に、出産がある場合、産休中は休むし、育児中には男性医師と全く同じ条件では働けないということですね。また、育児についてはいくら配偶者が半分受け持つといっても、母乳をあげたい人はどうなのかとか、夫が全く代わりをできるかとか、配偶者の仕事はどんな具合なのかとか、問 題は山積。それに、お子さんを持つ女性医師の方は、お子さんと一緒にいたいという気持ちがないはずない、と思ったんですよ。そういった気持ちと、医師とし てのミッションとの板ばさみになっておられるし、そういったお気持ちをどのように解決していくかは、大きな問題だと思いました。

浜子先生:そうですか。本質的なところに来ましたね。(浜子先生は驚いた顔をして私を見た。私だって、記者です!本質に近づかないでどうする!)

コユリ:今、保育所に関しては待機の解消など、各所で問題になり、解決策を模索中といったところですが、家事に関しては家庭任せですね。

浜子先生:そうです。家事に関しては何の補完策もなく、どうせ医者は給料がいいんだから、お手伝いさんでも雇えばいいんでしょうといった感じです。医師に限らず、フルタイムで働けば、家事は手間も時間もかかることです。配偶者に半分押し付けたところで、解決なんかしません。家事をする間、子どもの相手はできないのだから、仕事で忙しい上に、家で子どもを遊んでやることさえできない。仕事をしているという負い目にさらに焦りが出てきて、苦しくなってやめてしまうのです。職場では十分に医療ができていないのではないかという自問。

コユリ:どうやって解決したらいいのでしょうか。

浜子先生:コユリさんのような記者さんが、広くみんなに知らせて、これは医者だけの問題じゃなく、フルタイムで働こうとする人すべてにかかわるのだという意識を強くしていくことですよ。フルタイムで働けない人もいます。家事が好きな人もいます。そういった人たちがフルタイムで働く人をきちんとした対価を払われた上で助けると、社会や経済が大きく回っていくのですよ。

コユリ:浜子先生、どうもありがとうございます。
読者の皆さん、お付き合いありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

これで、コユリ記者のインタビュールームを終わります。ここでお断りいたしますが、この記事はフィクションであり、実在の人物、組織とはなんら関係ありません。では。

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