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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

知って役立つピロリ菌、除菌療法と検査

2018年8月23日放送2018年8月30日放送

2018年8月23日放送

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2018年8月30日放送

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知って役立つピロリ菌(放送内容 資料はこちら

ピロリ菌の基本についてお話します。

ピロリ菌ってなんですか?

1982年に、後にノーベル賞を受賞するオーストラリアのワレンとマーシャルという2人の医師が、胃の粘膜にいるらせん形をした細菌を発見しました。ピロリ菌は病理医の間では胃の生検組織標本で、強酸の中で菌が生息していけるはずがないと長い間ゴミが付着したと思われていました。しかし、ピロリ菌はウレアーゼという毒素を出して自身の周りにアンモニアを作り、アルカリ性のアンモニアで胃酸を中和して強酸の中で住んでいられたのです。

感染経路ははっきりとわかっていませんが、5歳以下の免疫が不十分な年齢では、汚染された井戸水や保菌者の親からの経口感染が原因と考えられています。上下水道が普及して環境が改善した近年は減少傾向で、2010年で50代以上では、70%の感染率ですが、40代で60%、30代以下では30%と若年とともに低くなっています。さらにここ20年で治療効果も上がり各世代20%は減少しました。

ピロリ菌はどんな病気を起こすのですか?

ピロリ菌に感染すると炎症を起こしてまず急性胃炎を起こし、その後免疫が不十分な小児期ではピロリ菌を異物と認知せず慢性化します。長い期間炎症が続くと胃粘膜の胃酸を分泌する組織が消失した萎縮性胃炎になります。一部の患者さんでは、ストレスなどを引き金に胃潰瘍や十二指腸潰瘍になり、抗潰瘍剤で治っても除菌をしないと7割以上の人が1年以内に再発します。

さらに進むと胃粘膜は腸の粘膜のように凸凹になり(腸上皮化生といいます)、この状態は胃がんのリスクが高いといわれています。そのために除菌療法を行うことが重要で、胃十二指腸潰瘍の予防と胃がんの進展への予防、発がんリスクを減少させることが重要です。遅くとも40歳までの除菌が推奨されていますので、ピロリ陽性の親は子どもに18歳のお祝いに検査を勧めてください。

また胃潰瘍の原因はピロリ菌だけではなく、消炎鎮痛剤や低用量のアスピリンやストレス、たばこ、お酒など多くが関連しています。他にピロリ菌が関与している病気は胃 MALT リンパ腫という胃の粘膜のリンパ組織に発生する腫瘍や、特発性血小板減少性紫斑病という血小板が減少し出血しやすくなり、紫斑という斑点が出現する病気などが挙げられており、保険診療でピロリ菌の除菌が認められています。

徐菌療法と検査(放送内容 資料はこちら

今回ピロリ菌を駆除する除菌療法についてお話します。

除菌療法とはどのようなことをするのですか?

一次除菌と二次除菌が保険に認められており一次除菌では、1週間に2種類の抗菌薬(ペニシリンとクラリスロマイシン)とPPI(胃酸の分泌を抑える薬)の計3種類を朝晩2回内服します。一次除菌7日間内服後、偽陰性を防ぐため4週間以上空けて、効果判定をする必要があります。検査には内視鏡を使う方法と使わない方法があり、内視鏡を使う方法は、迅速ウレアーゼ試験でピロリ菌のもつ酵素の働きで作り出されるアンモニアを生検組織で調べます。また採取した生検組織を染色して顕微鏡で観察する鏡検法や採取した組織を培養する培養法などがありますがいずれも生検組織を使うので内視鏡検査時に多少の出血リスクなど負担がかかります。

一方内視鏡を使わない方法は血液や尿や、便を採取してピロリ菌に対する抗原や抗体の有無を調べる方法があります。一番感度がいいのが、ユービット(検査薬)内服30分前後に呼気を採取し尿素の産生を比べる呼気試験で、次に感度がよいのが便中抗原検査です。コストが安くて簡単な尿中や血中の抗体測定を用いる場合は、除菌後6ヶ月以上は偽陽性になってしまうので、6ヶ月以上1年近くあけての検査が必要です。

いずれかの検査で、一つでも陽性が確認されたら二次除菌が適応になります。耐性クラリスロマイシンの代わりに、メトロニダゾールという抗原虫薬を用います。ぺニシリンと胃酸抑制薬PPI との三剤を禁酒しながら一週間内服します。除菌率は、95%と高く効果は期待できます。除菌全般の副作用には、下痢軟便が比較的多く、まれに味覚障害がありますが内服終了とともに軽快します。肝機能障害や発疹や痒みなど症状が軽ければ、7日間飲み続けてください。血便や、全身発疹などの場合は直ちに中止してください。

二次除菌不成功の時は、ニューキノロン系の抗菌薬を加えた三次除菌が専門機関で可能ですが保険適応外です。

ペニシリンアレルギーのあるかたはテトラサイクリン系の抗菌薬を用いる方法もあります。いずれにしてもすべてのピロリ菌感染者が除菌をする必要はなく、定期的に内視鏡検査をし、リスク管理を行い、ピロリ菌の活性を抑える胃薬の内服やヨーグルトを食べたりして炎症を抑え除菌成功者も含めて、ピロリ陰性胃癌や除菌後胃癌に注意し内視鏡検査を受けてください。

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