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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

運動と突然死―メディカルチェックの重要性、運動と水中毒―水分過剰摂取にご注意

2018年11月29日放送2018年12月6日放送

2018年11月29日放送

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2018年12月6日放送

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運動と突然死―メディカルチェックの重要性(放送内容 資料はこちら

運動は適度であれば健康にとって好ましい様々な効果がありますが、運動のやり方や運動をやる人の健康状態によっては障害を起こすこともあります。プロスポーツ選手ではない一般の皆さんは健康を害さないように楽しむことが重要です。

突然死とは通常の生活を営んでいた、健康にみえる人が急速に死に至ることで、外因死(交通事故など)は含まれません。WHOの定義では、瞬間死あるいは発病後24時間以内の内因死とされています。

運動中の突然死は、10万人あたり0.29~2.3人程度と報告されています。2017年に交通事故で亡くなられた方が10万人あたり4.2人ですからそれよりやや少ない感じです。
トライアスロンに関するアメリカの論文では、60歳以上の男性競技者の場合、死亡または心停止の発生率は10万人当たり18.6人に達していたとの報告もあります。

死因は若年者と成人では原因がやや異なり、若年者では肥大型心筋症や冠動脈奇形など先天的なものが多く、成人例とくに40代以降は虚血性心疾患が多くなってくるようです。
メディカルチェックの目的にはスポーツ参加が禁忌となる病態の検出、確定、潜在性疾患(特に突然死のリスク)の検出、スポーツ障害を起こしやすい状態の検出などがあります。

運動やスポーツ行事に参加する人すべてが自主的に、かつ定期的にメディカルチェックを受けることが望ましいですが、普通はスポーツのために健康診断を受ける必要を自覚しておらず、自分は問題がないと思っている人が大半です。運動やスポーツに参加する人が自ら健康確認を行い、医師のメディカルチェックを受けるべきかどうかの自己診断票があります。
メディカルチェックには目的やレベルに応じて様々ありますが、一般的には血液検査、生化学検査などの採血、尿検査、胸部X線写真、安静心電図場合により運動負荷心電図などがあります。
スポーツイベント当日のセルフチェックなどもありますので無理をしないことが重要です。

運動と水中毒(放送内容 資料はこちら

最近は熱中症などが多く話題となり、運動中の水分補給について気を遣われている方が多くみられます。
市民マラソンなどは比較的涼しいシーズンに行われることもありますが、マラソンはそういうシーズンでも脱水症や熱中症になるリスクもあるため、水分補給に関する知識は重要となってきます。

人間の体内には様々な電解質がありますが、その中でもNaは細胞外液、特に血管内液の量と浸透圧の維持に極めて重要な役割を有しています。人間の血清Naは135〜145mEq/Lで血漿中の陽イオンで最も多いものです。
体内Na量の調節は、取り込みは経口摂取が主(時に輸液)で、排出は主として腎臓から行われています。また運動時には汗からも多く失われます。

水中毒とは浸透圧異常の一状態であり、特に低浸透圧状態あるいは低ナトリウム血症が短時間のうちに起こり、何らかの症状が出現した状態で、重篤な場合は脳浮腫、昏睡、痙攣等の症状が発現します。
一般的に血清ナトリウム濃度が120mEq/L以下、血漿浸透圧が250mOsm/kg以下に低下すると、全身倦怠感、食欲不振、頭痛、悪心、嘔吐、無気力、傾眠などの症状があらわれ、血清ナトリウム濃度が110mEq/L以下、血漿浸透圧が230mOsm/kg以下になると昏迷、昏睡、痙攣などが起こるといわれています。

2002年に行われたボストンマラソン時のランナーの水中毒発症についての論文があり、ゴール後に低Na血症(<135mEq/L)は全体で13%(62/488)、女性ランナーの22%(37/166)、男性ランナーの8%(25/322)に生じ、3ランナーが重篤な低Na血症(<120mEq/L)で、それぞれ119、118、114mEq/Lだったと報告されています。
結論として走行中の体重増加、長いレース時間、体格指数が低ナトリウム血症に関連していると述べています。

脱水を気にするあまり運動中に水分を取りすぎると低ナトリウム血症、水中毒になる可能性があることも知っておきましょう。

プロスポーツ選手ではない皆さんは安全が第一です。楽しめる範囲内でスポーツをしましょう。

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