ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
こむらがえりと芍薬甘草湯 ―手軽さの裏で起きていること(放送内容 資料はこちら)
夜中に突然ふくらはぎがつる、いわゆる「こむらがえり」は、高齢者にとても多い症状です。外来でも、「痛くて目が覚める」「しばらく動けなくなる」といった訴えをよく聞きます。
こうしたときによく使われるのが、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)です。芍薬甘草湯は、筋肉の異常な収縮を抑える作用があり、飲むと比較的早く楽になることもあって、つってしまった“その場”をしのぐ薬としては、とても優秀です。使うこと自体が悪いわけではありません。
ただ、ここで一度考えてみたいのは、芍薬甘草湯は「治療」なのか、それとも「応急処置」なのか、という点です。
多くの場合、この薬は筋肉の過剰な緊張を一時的に和らげる役割を担っています。
つまり、こむらがえりが起こる原因そのものを改善しているわけではありません。
外来でよく耳にするのは、「毎晩つるから、寝る前に必ず飲んでいる」というケースです。薬が手軽な分、足のケアや運動をしなくなってしまう方も少なくありません。薬が悪いのではなく、薬があることで、自分の体に目を向けなくなってしまっていないか、そこが問題です。
芍薬甘草湯には、長期連用によって血圧の上昇やむくみなどが起こることもあります。本来は「困ったときに使う薬」であり、「毎日続ける前提」の薬ではありません。たとえば、つった直後に1包だけ使い、翌日からは水分と塩分の摂り方を整え、寝る前にふくらはぎをゆっくり伸ばす。これが基本です。頻回に起こる方は、脱水や冷え、飲み薬の影響なども一度確認してほしいですね。
こむらがえりは、年齢のせいと片付けられがちですが、筋肉の使い方や足の状態が深く関係しています。
次回は、その背景にある「足の構造」、特に後脛骨筋という筋肉に注目して考えていきます。
こむらがえりは足からのサイン(放送内容 資料はこちら)
こむらがえりを繰り返す方の足を診ていると、共通して目立つポイントがあります。それは、足の内側、いわゆる土踏まずを支える筋肉が弱っていることです。その代表が、後脛骨筋(こうけいこつきん)という筋肉です。
ここで、ラジオを聴いている方にも、ぜひ一度ご自分の足を触ってみてほしいと思います。
まず、足首の内側にある丸い骨、うちくるぶしを探してください
そのうちくるぶしの少し後ろ側からすねの骨とふくらはぎの間を、指でそっと押してみてください。
強く押す必要はありません。ゆっくり押していくと、「うっ、イタタ…」と感じる場所があると思います。そこにあるのが、後脛骨筋です。その場所から土踏まずの一番高いところに向かって伸びていくライン、そこが後脛骨筋の通り道です。この筋肉は、足のアーチを下から支える大事な役割をしています。
外来でも、この場所を少し押しただけで痛がる方は、ほぼ例外なく夜中のこむらがえりを訴えています。これは、筋肉がすでに無理をしたり、弱っているサインとも言えます。
こうした状態は、芍薬甘草湯だけでは根本的には改善しません。薬を飲めば、その場のけいれんは和らいでも、足の構造や筋肉の使い方が変わらなければ、同じことが繰り返されます。
シンプルな対策を3つ。
一つ目。タオルを足の指でたぐる運動。土踏まずを刺激します。
二つ目。足首を内側にひねる動き。後脛骨筋そのものの筋トレになります。
三つ目。後脛骨筋のマッサージ。先ほど押した後脛骨筋の通り道をイタ気持ち良いくらいの強さでマッサージします。
芍薬甘草湯を上手に使いながら、同時に足にも目を向ける。その意識が、つらない体への第一歩になります。まずは今夜から、試してみてください。小さな習慣の積み重ねが、いちばん効くと思います。