ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2026年8月20日放送(放送内容 資料はこちら)
不眠症というのは、「眠れない状態が週に3日以上、しかも3か月以上続いて、昼間の生活にも支障がでている」状態をいいます。例えば仕事で忙しくて眠れない日が続く、というのは誰でも経験しますが、原因が解消されても眠れない状態が続く―これが慢性不眠症です。
日本では成人のおよそ5人に1人がこの慢性的な不眠を経験しているといわれています。
不眠症は、大きく分けると3つあります。
- 1つ目は「入眠困難」寝ようとしても眠りにつけないタイプ。
- 2つ目は「中途覚醒」一度寝ても夜中に何度も目が覚めてしまうタイプ。
- 3つ目は「早朝覚醒」朝方に目が覚めて、それ以降眠れなくなるタイプ。
日本人に多いのは中途覚醒、つまり夜中に目が覚めるタイプです。またこれらが組み合わさっているケースも少なくありません。
眠れない原因にストレスは大きな要因の一つですが、それだけではありません。不眠症は「3つのP」で説明されることが多いです。英語でPredisposing(なりやすい素因)・Precipitating(引き金になる出来事)・Perpetuating(長引かせる要因)といいます。
「なりやすい素因」とは、もともと眠りが浅い体質の方や、心配性の方などです。そこに「引き金」、たとえば職場の問題や家族の病気などが重なる。ここまでは一時的な不眠ですが、「これじゃいけない、明日もきちんと眠れるだろうか」と布団の中で寝ることを意識しすぎてしまう―これが「長引かせる要因」になります。実はこの、「眠れなかったらどうしよう」という不安が、慢性不眠症を長引かせる最大の原因ともいわれています。
眠れない時が続いた場合の病院への受診の目安としては、「2週間以上続く」「日中に頭が働かない・仕事に支障がでる」「気分が落ち込む」といった状態が出てきたら、かかりつけ医に相談することをお勧めします。一人で悩まずに早めに相談して欲しいです。
また、不眠の裏に高血圧や糖尿病、うつ病などが隠れていることもありますので、専門家の目でしっかり確認することが大切です。
市販の睡眠改善薬は、一時的には使えますが、慢性的な不眠症の根本的な解決にはなりません。飲み続けると耐性がついて効かなくなることもあります。なるべく早く専門家に相談することが、長い目で見て近道です。
2026年8月27日放送(放送内容 資料はこちら)
睡眠治療は大きく分けると「薬を使わない治療(非薬物療法)」と「薬物療法」の2つがあります。そして今の世界的なガイドラインでは、薬よりもまず「認知行動療法」が最初に試されるべき治療として推奨されています。
「認知行動療法」は、「眠れなかったらどうしよう」という不安な考え方(認知)と「眠れないのに長く床に入っている」という行動(行動)の両方を変えていく、カウンセリングを中心とした治療です。
具体的に代表的なものを3つご紹介します。
- 1つ目は「刺激制御法」
「眠くなったら床に入る。眠れなければ一旦起きる」というルールを守ることで、布団=眠る場所、という感覚を脳に取り戻させる方法です。 - 2つ目は「睡眠制限法」
最初は少し思い切った方法で、「布団に入る時間を思い切って短くする」ことで、眠りを凝縮させ、深い眠りを取り戻していきます。 - 3つ目は「認知再構成」
「8時間眠らないといけない」「眠れないと翌日ダメだ」といった、睡眠に関する思い込みを科学的に見直す取組みです。
効果については、世界中のガイドラインで第一選択として推奨されているほど、科学的根拠がしっかりしています。薬より効果が長続きすることも示されていますし、うつ病や慢性疼痛を抱えている方の不眠にも有効だとわかっています。
薬についても大きく変わっています。かつて多く使われていた「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる薬は、依存性やふらつきのリスクがあるため、今は積極的には使われなくなっています。特に高齢の方は、ふらつきから転倒・骨折につながるリスクがあるので注意が必要です。
現在の主流は「オレキシン受容体拮抗薬」という新しいタイプの薬で、脳の「目を覚ます仕組み」を穏やかに抑えることで自然に近い眠りを促します。依存性が低く、翌朝への持ち越しも少ないことから、現在の第一選択薬として位置づけられています。もう一つ、「メラトニン受容体作動薬」というタイプもあります。体内時計を整える働きがあり、依存性がほぼないため、特に高齢の方や体内時計が乱れている方に向いています。
眠れない夜が続くのはつらいですが、決して諦めないでください。認知行動療法も新しい薬もあります。「一人で悩まず、かかりつけ医へ」。これが私からのメッセージです。