ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2026年10月29日放送(放送内容 資料はこちら)
今回は「高齢者の身体活動と健康」についてお話しします。第1回は、体を動かすことがなぜ大切なのか、というお話です。
年齢を重ねると、「無理に運動しない方がいいのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし、高齢者でも体を動かすことが健康に大きな利益をもたらすことが、さまざまな研究から分かっています。
まず、身体活動は、長生きと関係します。少し息が弾む程度の運動や、それよりやや強めの運動を続けている人は、そうでない人に比べて命を落とすリスクが低くなります。週にわずか75分ほど体を動かすだけでも、死亡リスクが22%低下したという報告があります。また、ウォーキングなどの有酸素運動だけでも約24%、筋力トレーニングだけでも約10〜17%、死亡リスクが低くなるとされています。さらに、有酸素運動と筋力トレーニングの両方を行うと、その効果はより大きく、死亡リスクが約26〜32%低くなることが報告されています。
こうした効果は、85歳以上の高齢の方でも認められています。つまり、「もう高齢だから運動しても遅い」ということはなく、年齢にかかわらず、できる範囲で体を動かすことが健康や長生きにつながると考えられます。
体を動かすことは、心臓や血管にもよい影響を及ぼします。有酸素運動は、血糖値や血圧を下げ、動脈硬化を軽くする方向に働きます。筋力トレーニングは、筋肉量を増やし、コレステロールや中性脂肪の新陳代謝を改善して心臓や血管の健康に役立ちます。
さらに重要なのが、転倒の予防です。身体活動は、転倒によるけがのリスクを32〜40%減らすという強いエビデンスがあります。特に、有酸素運動、筋力強化運動、バランス訓練を組み合わせた運動は、身体機能の改善だけでなく、生活の質も向上します。
そして、体を動かすことの効果は、体力づくりだけにとどまりません。運動を続けることは、認知症やうつ病になりにくくすることとも関係しています。
また、転倒や骨折を防ぐ効果については、信頼性の高い研究結果がそろっています。
このように身体活動は、「足腰のため」だけではなく、心臓、脳、こころ、骨など、全身の健康と関係しています。