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小児の脂肪肝

2026年5月28日放送2026年6月4日放送

2026年5月28日放送

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2026年6月4日放送

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2026年5月28日放送(放送内容 資料はこちら

世界的な健康課題としての子どもの「脂肪肝」

今回は、生活習慣と極めて関わりが深く、今世界中で注目されている肝臓の病気、脂肪肝についてお話しします。
子どもの脂肪肝は世界的に健康問題となっています。肥満のある子どものうち、高い国ですと、30%が脂肪肝であると、多くの国で驚くべき報告がされています。つまり、肥満のある子どもの3人に1人は、すでに肝臓に問題を抱えている可能性があるのです。これは単なる個人の生活習慣の問題を超え、現代社会全体で取り組むべき喫緊の課題といえます。
これまでお酒を飲まない人の脂肪肝は「非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD」と呼ばれてきましたが、「脂肪肝=生活習慣が悪い」という偏見を与えてしまうことが問題視されました。2023年、新たに「MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」という名称が採用されました。

日本の子どもたちの現状

日本の子どもたちの体格に起きている変化に目を向けてみましょう。
学校保健統計調査では、11歳の男子で約13%、女子でも約10%が「肥満傾向」と判定されています。コロナ禍による活動制限や不登校の増加といった複雑な社会的背景もあり、日本の子どもの肥満傾向は統計史上、過去最高水準になっています。

「沈黙の臓器」が発する静かな警告

肝臓はよく「沈黙の臓器」と呼ばれます。海外の研究を参考にすると、脂肪肝の子どものうち半数近くがすでに炎症を伴う病態であったという報告もあり、無症状の子どものうちに病気が進行しているケースが珍しくありません。
一歩進んで肝臓に炎症が起きる「MASH(マッシュ:代謝機能障害関連脂肪肝炎)」という状態になっても、本人に痛みや違和感はほとんどありません。自覚症状がないまま放置されると、30代、40代という人生の働き盛りに肝臓が硬くなる「肝硬変」や「肝がん」へ進む恐れがあります。
また、MASLDは将来の2型糖尿病、慢性腎臓病、心血管疾患といった代謝異常を背景とした全身の病気を引き起こす「早期警告」として認識する必要があります。子どもの頃の脂肪肝は、将来の健康を左右しうる静かな、しかし切実なサインなのです。

2026年6月4日放送(放送内容 資料はこちら

欧米の現状から日本の行く末を危惧する

脂肪肝を甘く見てはいけない最大の理由が、欧米の現状にあります。
かつて肝硬変の主な原因だったウイルス性肝炎に代わり、米国の若年成人において、脂肪性肝疾患に伴う肝硬変が肝移植の適応疾患として急速に増加しているという報告があります。これは決して遠い外国の話ではありません。
子どもの頃から始まった代謝異常が、30代、40代という人生の働き盛りで「肝不全」や「肝移植」という過酷な事態を招くリスクが懸念されます。

小児MASLDの治療:特効薬ではなく「日常生活の切り替え」

現時点で、小児のMASLDを劇的に治す特効薬は存在しません。治療の第一選択は「薬」ではなく「生活習慣の改善」とされています。ただし、ここで言う生活改善とは、子どもに厳しいダイエットを強いることではありません。
治療の真の目標は、肝臓の工場に流れ込む過剰な糖や脂質の負荷を減らし、工場の処理機能を回復させることにあります。

食事療法で最も優先すべきは、量を減らすことよりも、ジュースやスポーツドリンクといった「液体で摂る糖分」を減らす引き算です。噛まずに吸収される液体の糖分は、肝臓にとって最も過酷な負担となります。これをお茶や水に変えるだけで、肝臓の工場は休息を得られます。
運動もハードな訓練は必要ありません。外遊びや階段の利用、スマホ時間を少し削って家族で散歩するなど、日常の動きを増やす「日常生活の切り替え」が、肝臓の代謝スイッチをオンにします。

当院の取り組み:家族の歩みに寄り添う

当院では、検査で肝臓の状態を正確に評価するだけでなく、家族全体を一つのチームとして支える「ヘルシーチャレンジプログラム」を実施しています。
子ども本人を責めるのではなく、家族全体で無理なく続けられる生活の工夫を共に考え、伴走します。
MASLDは、早期に発見し、家庭と医療が手を取り合えば、改善が十分に期待できる病気です。今、子どもの肝臓を守ることは、一生付き合っていく体を守り、将来の糖尿病や心臓病を防ぐための、かけがえのない「未来への投資」なのです。

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