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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

冬の胃腸病

2020年1月9日放送2020年1月16日放送

2020年1月9日放送

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2020年1月16日放送

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1月9日放送内容

今回は冬季によくみられる、胃腸病についてお話したいと思います。
毎年のように話題に上るのが、ノロウイルスです。
最近突然出現したウイルスというわけではなく、古くからノーウォークウイルスや、SRSV(小型球形ウイルス)などと呼ばれていました。ノロウイルスはあくまでもウイルス属の名前であり、正式な名前ではないため、2011年からはノーウォークウイルス種による感染症と呼ぶように推奨されています。

ノロウイルスは小腸に感染するため、まず胃もたれ感やおなかが張った感じが出現し、その数時間後に激しい嘔吐と水っぽい下痢が止まらないのが特徴です。38℃程度の発熱も生じます。
激しい症状は1-2日でおさまり、後遺症も残りません。

治療には抗生物質などの特別な薬は必要なく、冷たくない経口補水液などを十分量飲むことが必要です。
よく、飲むと嘔吐してしまうのでと何も水分を摂取されない方がおられますが、脱水症になりかえって病気を重症化させてしまいます。
一度に大量にごくごくと飲むのではなく、1回あたり50cc程度の少量を数回にわけて飲むのがコツです。それでも、どうしても吐いてしまう場合には、医療機関で点滴を受けていただくことになります。

感染経路は二つの経路が知られています。
一つは飲食物からの感染です。有名なのは魚介類が汚染されているケースです。魚介類そのものが新鮮かどうかは全く無関係です。また、井戸水が汚染されてしまうことで感染するケースも報告されています。
二つ目の感染経路としては人から人への感染です。感染した人の糞便や嘔吐物が便器や手指を介して感染します。また、糞便や嘔吐物が乾燥して空気中に飛び散ることで感染する飛沫感染も起こします。

消毒薬としてアルコールが有名ですが、ノロウイルスはアルコールに対して抵抗性があり、手指をアルコール消毒したり、下痢や嘔吐で汚れた物、場所にアルコールをまいても効果はありません。
ですから、感染した人はよく流水で手を洗い流すことが重要です。

また、ウイルスに汚染された下着や便器などを処理する場合には、使い捨てのマスク、エプロン、手袋を着用し、次亜塩素酸ナトリウム、家庭用の塩素系漂白剤5%液を薄めて消毒に使用します。
衣類には水500mlに塩素系漂白剤の原液10mlを混ぜたもので消毒します。また、トイレやドアノブ、蛇口、手すり、カーテンなどには、水500mlに塩素系漂白剤の原液2mlを混ぜてスプレーで噴霧するとよいでしょう。

今のところ、ワクチンは開発されてはいないので、やはり、流水でしっかりと手を洗うことと、うがいなどが予防の基本となります。

1月16日放送内容

ノロウイルスの他に、冬によく見られるウイルス性の胃腸炎として、小さなお子さんを中心に流行し、家族内で感染しやすいロタウイルス感染症とインフルエンザBがあります。

ロタウイルス感染症は12月から1月に流行することが多く、乳幼児の下痢症状としては最も重症で脱水症のため入院治療が必要になることもしばしばです。
普通は5歳までにほぼすべての子どもが感染すると言われており、一般的には大人にはあまり症状がでないと言われています。
感染経路はノロウイルスと同様、下痢便に大量にウイルスが含まれているため、手や爪から感染していきます。

症状は2-4日の潜伏期間の後、水のような下痢や嘔吐が繰り返し起こります。便の色が少し白っぽく見えるのも特徴です。けいれんなどの症状がおきることもあり、注意が必要です。

治療は特別な薬はなく、脱水症状にならないように十分な水分と塩分を補給することが大切です。安易に下痢止めを内服することは良いことではありません。
汚染物の処理はノロウイルスと同様で5%の家庭用塩素系漂白剤を薄めて使用します。
最近ではワクチンが開発され、乳児期に任意接種することが可能です。かかりつけの先生にご相談ください。

また、インフルエンザBは急激に発症する発熱と咳の症状に加えて、下痢や嘔吐の症状を伴います。
治療はあくまで対症療法で、インフルエンザAと同様に抗インフルエンザ薬は熱の期間を短縮することは出来ても、咳や下痢の症状を早めに改善する作用はありません。

ところで、この時期は忘年会や新年会で外食の機会も多いと思いますが、注意したいのは生焼けの鶏肉です。
カンピロバクター腸炎という細菌性の腸炎を起こすことがあります。
潜伏期は汚染食品接種後2-5日後に急激な頭痛、発熱が発症し、2日目くらいから腹痛、嘔吐、下痢が始まります。
ですので、最初はまるでインフルエンザにかかったかのように感じることがありますが、2日目になっても咳がでないところがインフルエンザとは大きな違いです。人によっては虫垂炎と間違えるような右下腹部の痛みになる場合もあります。
基本的には対症療法で改善しますが、症状が強い場合にはマクロライド系の抗生物質が奏効しますので、かかりつけの先生の診察をうけて判断をしてもらいましょう。
他の胃腸炎と同様、水分、塩分を十分にとることが最も大切です。

どんな胃腸炎でもそうですが、基本は塩分と水分を十分にとって、脱水症状にならないようにすることです。
経口補水液という便利なものが市販されていますので、この時期は常備しておくと良いかもしれません。
少し症状がよくなったら、消化の良い食べ物としてリンゴ、バナナ、ライス、パンなどをWHOが推奨しています。少しずつ無理のないように食べ始めると良いと思います。

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