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熱中症

2020年7月23日放送2020年7月30日放送

2020年7月23日放送

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2020年7月30日放送

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7月23日放送内容

いよいよ本格的な夏を迎え、熱中症の季節が到来しました。今回は熱中症とはどんな病気か、どんな人がかかりやすいのか、初期にはどんな症状がでるのかについてお話しします。

熱中症は気温の高い環境や運動により、体にたまる熱が体から発散する熱を上回り、体の中心部の体温が上昇することによって引き起こされます。このために、40.5℃以上の高体温が発生し、あたかも全身に細菌が回ってしまう敗血症のように、全身の炎症反応がおこって、臓器に小さな血栓が詰まってしまうため、脳の機能障害や様々な内臓の障害が生じます。したがって、一旦発症したら適切な治療が必要です。

熱中症は大きく分けて二つあり、高温環境から受ける熱に対して、体が熱を発散しきれない“いわゆる熱中症”と、運動によって過剰に生産される熱がもともと決まって失われる体の熱を上回った時に生じる“労作熱中症”に分かれます。

いわゆる熱中症は、熱に対して対応が困難な高齢者や慢性病をもった人、思春期前のこどもがかかりやすいです。特にクーラーの効いていない自動車に赤ん坊を長時間乗せるのは死に至る可能性もあり危険です。

労作熱中症はスポーツ選手や消防士、農業を営む人、建設現場ではたらく人など、激しく動く人に多くみられ、1時間程度の動きであっても発症することがあります。また、自分の体から作られる熱が関与しているため、極端な高温環境でなくても起こりうることに注意しましょう。
特に、プロスポーツ選手、中学、高校の部活動では仲間やコーチからのプレッシャーにより、自分の体の限界を超えたパフォーマンスを行いがちであり、最大の危険因子と言われています。また、最近流行の野外での音楽フェスティバルなどでは、エネルギッシュな音楽にのって体を動かし、さらにアルコール摂取を伴えば更に代謝が亢進されるので、多くの労作熱中症が発生することが知られています。
したがって、労作熱中症は健康な若者にも起こります。

労作熱中症の症状は、高熱で、はあはあと呼吸が早い、脈も速く、血圧が下がっているため脈は触れにくいです。
おとなしくしていても高温環境下でおこる古典的熱中症では皮膚は乾燥していることが多いですが、労作熱中症では汗を大量にかき、皮膚は湿っています。顔色は赤みを帯びていることもあれば、青白いこともあります。
脳の症状は様々で、いつもとは異なる行動をしたり、攻撃的になったり、錯乱状態に陥ることもあります。また、呂律がまわっていないこともあり、めまい感を訴え倒れたりすることもあります。胃腸症状と間違われますが、吐き気、嘔吐もよくみられ、脳の異常の初期症状でもあります。

皆さんは、このあたりで気づいていただき、医療機関を受診するようにしてください。
ここが遅れると、重症化して集中治療室での治療が必要となったり、その甲斐なく死に至ることもあります。重症化すると、たとえ命が助かったとしても、脳への大きな後遺症が残ることもあります。
最近のある研究では、熱中症にかかると、回復後に死亡するリスクがそうでない方よりも高い可能性があることが示されています。

7月30日放送内容

熱中症予防には何に気をつけるべきか、ウィズコロナの時代にどう対応すればよいかなど、お話します。

いわゆる熱中症の予防としては、かかりやすい高齢者、慢性病の方、乳児を含む思春期前のこどもなどを高熱環境から守ることが最も重要です。冷房の効いた部屋で過ごす、冷房の効いた施設に滞在する、扇風機を使用する、冷たいシャワーを浴びるなどです。とくに独居のお年寄りなどには家族や町内会でこまめに声がけや電話、SNSなども利用して、健康状態をチェックすることが必要です。

労作熱中症になりやすいスポーツ選手や労働者の方は自分で自分を守るために、いつもより努めて早めに休憩を入れることが重要です。
また、組織としても個人を守るために熱中症予防策をたてる必要があります。具体的には暑さに対応する訓練、体力の程度に合わせて運動の強さを調整すること、暑い時間帯のトレーニングを避けること、空気を通しやすく、汗が蒸発しやすい衣服にし、汗の蒸発を妨げる装具などを取り外すこと、適切な水分補給を維持すること、活動中は計画的に休憩時間をとることなどです。

水分摂取は手軽にできる方法ですが、水分だけなく適切な塩分補給も大切です。
市販のスポーツドリンクでも良いのですが、糖分を取り過ぎてしまうのが難点です。厚生労働省は水1Lに対して親指、人差し指、中指の3本でひとつまみ、またはふたつまみの食塩(0.1〜0.2%食塩水)を溶かした食塩水を20〜30分おきにコップに1〜2杯飲むことを推奨しています。ただし、高血圧、腎臓病の方はかかりつけ医によく相談して飲み方を決定してください。特に高齢者では、喉の渇きを感じるセンサーが鈍っていますので、喉が渇いてからでは遅く、渇きを感じる前に定期的に水分/塩分補給をすることが必要です。
最近では熱に体を慣らしていくトレーニングの方法がガイドブックとして出てきたので参考にすると良いでしょう。
簡単な方法としては、涼しい時に、ウォーキングなど少し汗をかく程度の軽めの運動を続けると、汗をかく量が増え、皮膚の血流が増し、汗に含まれる塩分量も減り、血液量が増え、心拍数も減少するといった良い効果がえられ、気候の変化に対応できるようになります。

今年は新型コロナウイルス感染症の蔓延という未曾有の事態に国内外ともに震撼しています。先頃、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言が、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会の共同声明として発表されました。
基本的な予防対策はこれまでお話しした通りですが、マスク着用によって生じる体への負担についてのコメントがされています。
人は体から熱を発散することで、体温が高くならないように調節していますが、呼吸によっても熱を発散しています。マスクを着用してジョギングをすると熱中症になるのではと報道されることも多いですが、実際にはマスクを着けた場合、心拍数や呼吸数、体内の二酸化炭素が増加し、マスクを付けている部分の体温が他の部位より1.76℃上昇しますが、熱中症の発症にかかわる深部体温には差がでなかったと報告されています。
ただし、心拍数、呼吸数、二酸化炭素、体で感じる温度の上昇が見られるため、マスク着用で体に負担がかかることは事実です。また、暑さに体を慣らしていくことは大切ですが、外出制限など在宅時間が長くなり、軽めの運動でさえ十分ではなくなるので、自宅の中で、立ち上がって足踏みをする、スクワットをする、体操をするなどの工夫をするとよいでしょう。

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