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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

過活動膀胱

2019年5月30日放送2019年6月6日放送

2019年5月30日放送

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2019年6月6日放送

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5月30日放送内容(放送内容 資料はこちら

今回は過活動膀胱についてのお話をしたいと思います。1回目の放送では過活動膀胱の頻度、原因について、2回目の放送では治療について触れたいと思います。

過活動膀胱の診断は週1回以上の尿意切迫感が必須となります。
尿意切迫感とは急に起こる我慢できない強い尿意を指します。ふつうは頻尿を伴いますが、尿漏れはある場合も無い場合もあります。もちろんほかの病気、例えば膀胱炎、膀胱結石、膀胱がんなどがないことを調べます。
その頻度ですが、日本排尿機能学会の調査では40歳以上の男女の12.4%の方にみられます。女性においては10人に1人の確率となります。年齢を重ねるごとに男女ともに頻度は増加して、80歳以上では全体の36.8%に達しています。

それではなぜ過活動膀胱は起こるのでしょうか。
神経系のトラブルが原因か否かで大きく2つに分けられます。
明らかな神経系のトラブル、例えば脳出血、脳梗塞などの脳血管障害、その他にパーキンソン病、脊髄損傷、糖尿病などによる神経疾患が起こると、複雑な神経のネットワークが障害されて過活動膀胱が生じることが知られています。次に神経トラブル以外の原因もあり、メタボリック症候群、生活習慣の乱れに伴う血管の障害、自律神経障害などが神経因性膀胱の発症に関係しているとされています。
そのほかにも男女の性別による特有の原因も考えられています。
先ほどの日本排尿機能学会の調査結果からは50歳以上での過活動膀胱は男性に多くみられました。その原因としては、前立腺の病気との関連が考えられます。また尿失禁は女性に多く見られました。それは骨盤底の筋肉のトラブルとの関係が疑われています。このように性別でもその原因が異なると考えられています。

6月6日放送内容(放送内容 資料はこちら

今回は過活動膀胱の治療についてお話ししたいと思います。

治療の柱としては行動療法と薬物療法が挙げられます。
行動療法は体に優しくて副作用もなく、またほかの治療と併用可能であることから最初に用いられる治療です。
まず体重減少は尿失禁の予防に効果があると多数報告されています。ほかに水分、カフェインなどの過剰摂取の抑制、便秘の解消などが挙げられます。

膀胱訓練ですが、トイレを我慢することにより膀胱を拡張することを目的としており、科学的根拠も示されています。
この次に述べる骨盤底筋体操を行いながら我慢するとその効果は高まるとされています。具体的には少しずつ我慢する時間を延ばして2~3時間の排尿間隔が得られるように進めます。
行動療法の最後に挙げるのは骨盤底筋運動ですが、膣と骨盤を意識的に緩める体操を行うことにより、排尿筋の異常反射を抑制します。女性の切迫性尿失禁に対しては特に膀胱訓練との併用によって有効ですが、男性に関しての有効性は明らかではありません。

薬物療法については、古くからあるのは抗コリン剤です。
膀胱の神経の過敏な働きを抑えることにより、効果を発揮します。しかし副作用として口内乾燥、便秘などがあり、その副作用に注意する必要があります。一方でβ3アドレナリン受容体刺激剤は抗コリン剤とは全く違う作用機序を持つために副作用が少ないとされています。

最後に男性特有の原因により過活動膀胱の治療で注意しなければならない点があります。
男性の高齢患者では前立腺肥大症が影響している場合が多く、治療はまず前立腺肥大症の治療薬が用いられる点です。その上で過活動膀胱治療薬の併用が考えられることとなります。

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