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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

10月31日放送内容(放送内容 資料はこちら

便秘症は20代女性で4%、75歳以上では男女とも10%超で罹患率が高いですが、海外で標準的に使えるお薬がなかったなど意外にも日本の医療は遅れていました。2017年に日本初の診療ガイドラインが作成されました。

便秘の原因は様々です。大腸がんなども便秘の原因となりうる(器質性便秘)ため、見落とさないことが重要です。
大腸がん検診として広く行われている“便潜血”法は、各種がん検診の中でも有効性評価トップ(推奨度A)です。1999年アメリカの報告では、毎年の便潜血を用いた大腸がん検診で大腸がん死亡率が33%減少しました。2001年日本の報告では、便潜血陽性者が精密検査を受けた場合、受けなかった場合に比べて大腸がん死亡リスクが1/4になりましたが、残念ながら検診および精検受診率が低いため日本の大腸がん死亡は減っていません。別の日本の報告で、同じ便潜血陽性者でも“痔がある”と自覚ある場合とない場合とを比べ、自覚があるグループのほうが約2倍大腸がんが発見されました。
医療機関でも痔があると精検を強く勧めないとか、再検査で済ませてしまうことがありますが、認識すべきと思われます。

便秘で大腸がんなどを疑う症状として、“排便習慣が最近変化した”“最近急激に体重が減った”“血便”“腹部に腫瘤”“発熱”“大腸がんや炎症性腸疾患の家族歴あり”“50歳以上で初めて便秘になった場合”があります。
これら注意すべき原因ではないものを機能性便秘症といい、「排便回数減少型」(便回数が週3回未満)と「排便困難型」(残便感や排便困難感)に分けられます。前者は様々な原因、後者は便意を感じないまたは直腸内圧を上げ同時に骨盤底筋群(肛門括約筋を含む筋群)を緩める作業がうまくいかないことなどが原因です。

11月7日放送内容(放送内容 資料はこちら

便秘症が原因で排便回数減少型の便秘をきたしている場合、休薬・変薬・下剤追加などで対応します。刺激性下剤の連用による腸管運動低下が原因の場合、後述する通り新規薬剤への変薬が望ましいですが、長年使用している場合など変薬に時間を要する場合もあります。

排便困難型に対してはバイオフィードバック治療が有効ですが日本では保険が通っていません。
一般的治療である生活習慣改善は「エビデンスレベルは低いが有効性示唆」とされ推奨されます。
具体的には1日18~20g以上の食物繊維、乳酸菌、運動、腹壁マッサージが挙げられます。例えば納豆1人前、おから1皿、玄米1膳は、各々3.4g、4.6g、1.5gの食物繊維を含みます。

薬剤で推奨度Aは浸透圧性下剤、上皮機能変容薬、推奨度Bは刺激性下剤です。
浸透圧性下剤は市販もされているマグネシウム系下剤や昨年末保険が通ったポリエチレングリコールなどがあります。
便を軟化し便回数を増加させます。ただしマグネシウム剤は腎機能障害/高齢者では副作用に注意が必要です。
上皮機能変容薬は腸粘膜表面タンパクに作用して水分を分泌させ便を軟化します。ルビプロストンは最近細かい用量調整ができるようになり、リナクロチドは同時に腸管知覚過敏も改善し便秘型過敏性腸症候群に有効です。エロビキシバットはヒトの胆汁を利用して便を軟化し同時に大腸も動かす働きがあります。
これまで日本で多用されてきた刺激性下剤は長期連用で便秘の難治化や大腸ポリープが増えるとの報告もあり、短期的/必要時のみの使用が理想です。また坐薬・浣腸も短期的には有効ですが、長期使用は副作用や習慣性を招くことがあり注意が必要です。

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