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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

夜尿症

2020年4月2日放送2020年4月9日放送

2020年4月2日放送

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2020年4月9日放送

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夜尿は、夜間睡眠中に不随意に尿を漏らす現象で、5歳以降で1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月以上続く場合には、夜尿症とされます。夜尿症は5-6歳で約20%、小学校低学年で約10%、10歳を超えても5%前後にみられます。中学生になると1-3%まで減少します。
夜尿の存在は、肉体的にも精神的にも子供の生活の質を低下させるため、積極的に治療することが大切です。

夜尿症を診察するにあたっては本人と親の疑問や不安を受け止めた上で、病気の原因を理論的にわかりやすく説明して、具体的な対処法を示し、治癒までの見通しをわかりやすく説明するようにしています。

夜尿症の診療は、病歴の聴取、身体診察、そして検査所見から基礎疾患や合併症の有無を含めた、正しい診断を導き適切な治療を選択することが大切です。病歴聴取の目的は、夜尿の状況、遺尿の有無や関連する生活習慣について知ることです。
夜尿症の子供に対しては心理的ダメージに配慮し、保護者との良好なパートナーシップを構築するために、保護者の話に良く耳を傾け、保護者の気持ちを理解できるよう心がけています。

生活指導

夜尿症の子供に対する家庭での夜尿対策の3原則は「起こさない」、「怒らない」、「焦らない」事です。
特に夜中に夜尿する前に起こすことを習慣的に行うと、睡眠のリズムを乱し、抗利尿ホルモン(尿の量を減らすホルモン)が減るため、寝ている間の尿量が増え、夜尿がひどくなる原因にもなります。保護者が怒ったり、焦ったりせず、むしろ夜尿しなかった朝には褒めてあげるようにしましょう。

食生活では、夕方5時以降は、特に夕食時とそれ以降の水分や塩分の摂取を控え、寝る前には必ずトイレに行く習慣をつけるのも大切なことです。

夜尿症の治療の上で、子供の日常的な水分摂取や排尿・排便の情報はとても重要です。日誌を記録して、医療機関を受診する際にはかかりつけ医にお見せください。

子供の夜尿症の治療の基本は1.生活指導を含む行動療法、2.積極治療(抗利尿ホルモンを中心とした薬物治療や夜尿アラーム療法)があります。
行動療法はすべての患児に行い、改善がなければ積極的治療を併用します。小学校入学前の夜尿症患児は自然治癒率が高いこともあり、原則として積極的治療は行わず行動療法のみとします。

摂取水分の日内リズムを形成するため、朝食・昼食時には水分を十分に摂ります。夕食はできるだけ就寝3時間前には済ませ、夕食後は200ml以内の水分摂取にとどめるようにします。3時間の根拠は「摂取した水分の約81%が3時間後に尿となり排泄される」という臨床研究成果に基づいています。
夕食では塩分の多い食品(味噌汁や漬け物)などを控えます。糖分やタンパク質なども塩分同様に尿量が増加するため、夕方以降は糖分が多い飲料、アイスクリーム、牛乳やフルーツは制限します。
どうしても口渇が強い場合は、うがいをさせたり、氷を食べさせて対応します。冷蔵庫の製氷皿でできる氷は1個あたり10-15mlの水分しか含みませんので夕食後5-6個までは摂取可能です。

積極的治療

生活指導や行動療法を実行して2週間経過しても効果がない場合(夜尿回数の減少率が50%未満)の場合には積極的治療を開始します。
積極的治療の第一選択は薬物療法か夜尿アラーム療法です。

■抗利尿ホルモンによる薬物治療

抗利尿ホルモンの合成誘導体で、腎尿細管における水の再吸収を促進させ尿量を減らします。本薬剤は夜間多尿で機能的膀胱容量が正常な夜尿症患児に効果があります。就寝前に服用します。

【副作用】
水中毒、およびそれによる低ナトリウム血症があります。処方する際には、

  1. 過度に飲水した場合は本剤の投与を行わないこと
  2. 発熱、胃腸炎など水分補給が必要となる急性疾患を合併した際は本剤の投与を中止すること
  3. 水中毒を示唆する症状が(倦怠感、頭痛、悪心、嘔吐)が現れた場合はただちに投与を中止し、速やかに医師に連絡すること
  4. 他院や他科を受診する際には本剤を投与中の旨を担当医師に報告すること

などを患児と保護者に説明しています。

■夜尿アラーム療法

夜尿アラーム療法は、夜間睡眠中に排尿が起こると尿の成分をアラームセンサーが感知して、警報音や身体への振動刺激により夜尿症患児を覚醒させる治療法です。ある種の条件付け療法です。

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