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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

大腸がんに対する外科治療

2020年9月17日放送2020年9月24日放送

2020年9月17日放送

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2020年9月24日放送

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9月17日放送内容

日本で年間にがんと診断される人は約86万人で、がん腫別で見ると罹患数は大腸がん、胃がん、肺がんの順で多く、死亡数は肺がんが最も多く、大腸がん、胃がんが続きます。

生涯で大腸がんに罹患する確率は、男性10%(10人に1人)、女性8%(12人に1人)くらいです。また、生涯に大腸がんで死亡する確率は、男性3%(100人に3人)、女性2%(100人に2人)くらいになります。
大腸がんにかかる割合は、40代から増加し始め、高齢になるほど高くなります。
大腸がんは罹患の頻度が高い悪性腫瘍であり、日ごろから生活習慣にも気をつける必要があると思います。

大腸がんの予防に効果があるといわれているのは適度な運動です。週4日以上の有酸素運動は大腸がんのリスクを44%減少させるという研究がありますし、毎日1時間程度、軽めの有酸素運動でOKという報告もあります。その他肥満の人はダイエットすることも有効です。

大腸がんの発見に関しては、便に血液が混じっているかどうかを検査する便潜血検査が、簡便で有効であることが明らかになっています。大腸がんの治療では、症状が出る前に、検診などで早期発見することが重要で、早期に発見できればがんを完全に取り除ける可能性が高くなります。

もし大腸がんと診断されたら、みなさんはどうしますか?
大事なことは慌てないこと。がんという診断を聞いて大変ショックなのは当然です。ただし、人は慌てるとミスを犯すものです。ここは落ち着いて善後策を考えるようにしましょう。
まずは自分のがんの進み具合(進行度)を正確に把握してください。

多くの方はインターネットで“大腸がん”と検索することでしょう。ただし、そこで得られる情報はあくまで一般的なもので、個人の診断に基づいていないため、正確でなく有用とは限りません。
医療機関を受診し、病気の進み具合を正確に把握するための検査を受ける必要があります。

大腸がんはがんの深さ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無に基づいて、ステージ1期から4期に分類されます。自身のがんの進み具合に応じた適切な治療を受けることが大切です。
実際に現在では進行度に応じ推奨される治療がガイドラインで細かく決められています。この段階では医師の勧める治療がガイドラインに照らし合わせて適切かどうか調べてみたり、医師に尋ねてみてもいいでしょう。
ぜひこの三つを心に留めておいていただければと思います。繰り返しますが自分の病状の正確な把握が何より重要です。

9月24日放送内容

大腸がんは明らかな遠隔転移がない場合、80〜90%を手術で治療することになります。進行度によりますが、手術により再発しないで治ることが、90〜60%程度期待できます。
大腸がんの手術治療では、がんの部分の切除だけではなく、周囲のリンパ節を合わせて切り取ること(これをリンパ節郭清りんぱせつかくせいといいます)が非常に重要です。このことでリンパ節転移の危険があるがんも再発しないように治療をすることが可能になり、リンパ節郭清の精度が治療成績に影響してきます。

手術のアプローチとして腹腔鏡手術が行われるようになりました。これは従来のようにお腹を大きく切開して手術を行うのではなく、小さな穴からカメラや器具を挿入してがんに対する手術を行います。この手術は従来の開腹手術に比べ術後の痛みが軽減し、腸管の機能回復が早くなり、美容的にも有利です。
みなと赤十字病院では大腸がん手術の90%以上を腹腔鏡手術で行っています。ただし技術的にやや難易度が高いため、十分な修練を積んだ施設で行うことが推奨されます。

また、最新の手術としてロボット支援手術も行われる様になってきました。
ロボット支援手術の最大の利点は、体の中の深い位置で、人間の手では不可能な精密な操作が行えるという点です。また患者に直接触れなくても、ロボットを介して遠隔操作が可能です。ロボットは人の能力を補うことを目的に開発されるため、今後ロボット工学器機の進歩に伴ってさらに発展し、手術がより安全に精密に行われる様になることが期待されています。

ステージ4、すなわち遠隔転移のあるがんに対しては治療がやや複雑になります。血液を介してがんが広がっていくため、主に化学療法、すなわち抗がん剤を血管内に投与する治療法がとられます。ただし、大腸がんでは転移巣の切除も治療効果があることが分かっているので、切除できる場合には積極的に手術も併せて行うことが重要です。
こういった化学療法、手術、あるいは放射線治療などを併せて行う治療を集学的治療といいます。ひとつの治療に拘ることなく、各々の専門医が連携して行うことが重要で、トリアージには高い専門性も要求されます。

大腸がんは、罹患率は高いのですが、適切な治療を受ければ比較的治りやすく、治療方法も豊富です。
もし大腸がんと診断されても、ひるむことなく前向きに向き合っていただければと思います。

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