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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

心因性視力障害

2020年10月29日放送2020年11月5日放送

2020年10月29日放送

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2020年11月5日放送

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10月29日放送内容(放送内容 資料はこちら

知らないうちに心にストレス(負担)がかかり、身体のあらゆるところに、様々な症状がでることを心身症といいます。前思春期の子どもに多く見られ、眼科では視力によく症状が出ます。これが心因性視力障害です。

学校健診での視力測定で、ほとんどが見つかります。逆に視力を測らなければ、見つからないことが多いです。
本人からの訴えは少ない事が多く、普段はゲームをしたり走り回ったりして、周りの方からみて異常があるようには見えません。

心因性視覚障害の状態は、近視や遠視のほか、視力低下の原因となる病気がないのにもかかわらず、裸眼視力が0.7未満で学校保健上のC~D判定を示すことが多いようです。
また、眼科で近視や遠視のレンズを入れて視力測定してみても視力は改善しないか、少し改善を認めるだけのことが多いです。他の検査では、視野検査(見える範囲の検査)で視野が狭くなっていることがあったり、色覚検査で異常を示すこともあります。

種々の検査により、正常な視力があると推察され、なんらかの心理的な要因により視力低下が生じているものと考えられますが、心理的要因の特定はできないことも多いです。精神的疾患が潜んでいることもあるため、心配なときには、児童精神科も受診させてください。

心因性視覚障害の発症年齢は学齢期、6~15歳で、特に8~12歳に多く、学齢期以前や高校生以降には少なくなります。性別は、女子が多く、男子の3~4倍とされています。両眼性がほとんどですが、片眼性も5%程度はあります。

世間的に「きっちりしている」「良い子」と評価のある子どもに多いと言われています。
通常は病気のふりをしているわけではなく、この年代の子ども達に起こる身体的・心理的発達期に発症する、特徴的な現象であると思われています。

11月5日放送内容(放送内容 資料はこちら

心因性視覚障害には共通する特定の原因はありません。しかし、家庭環境や学校関係、ほかに交友関係の問題、中には周囲から褒められたことが、心的葛藤を引き起こし発病することもあります。
親の保護下にあった子どもが、学校・お稽古・塾などによる新しいストレスが生じる一方、学校生活などでの社会行動に対する周囲・自己の要求から「良い子」を求められます。そのため本人の自覚なしにストレスが増大し、しかもストレスの解決法が未発達のため心因性視覚障害が生じると考えられています。

心因性視覚障害の子どもの保護者には、世間体を気にするケースが多いとの報告があり、子どもに負担を強いる傾向が見られるため、保護者による子どものストレスの緩和が大切になります。基本的には心理社会的ストレス、すなわち学校や家庭でのストレスがないかを探し、見つかれば徐々に取り除くことが大切です。

ストレスになるものが見つからなくても周囲の者が子どもを見守るだけで、症状が改善することが多くあります。ただし、高学年の子どもにおいては周囲の者には心を開かず、なかなか改善しないこともあります。
また、保護者自身が子どもの病気に気付いていないことも少なくないので、保護者の理解、特に親とのふれあいの時間を増やすことが大切です。

家庭での注意点は、必要以上に心配し、神経質にならないことです。
「なぜ見えないの」というような不用意な言葉や「心の問題だ」などと心因性の障害を告げること、むやみに励ましたりすることなどで症状が長期化することもあります。
逆に無関心でいることも問題です。成長するに伴い心因性のストレスが薄らぎ、自然治癒も多いので、適度な関心をもって温かく見守っていく環境が望ましいです。

学校での対応としても、担任教師の理解や受容、「家庭-眼科医-学校」の連携が必要です。養護教諭が窓口になり、学校と教職員間での対応、医師や家庭との連携のあり方も大切になります。

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