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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

くすりに関する様々な誤解に答えます

2021年2月18日放送2021年2月25日放送

2021年2月18日放送

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2021年2月25日放送

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2月18日放送内容

熱が出たり、咳が出たり、下痢をしたり具合が悪くなりますと、みなさんはかかりつけ医を受診します。過去に内服して病気がよくなった、症状が改善したという経験があると、また、あのお薬をもらえば病気はすぐによくなるからと、皆さんから、処方薬のリクエストが出ることがあります。今回は薬に関して皆さんが誤解されていることを中心に、その代表的なお薬についてお話ししたいと思います。

みなさん、風邪を引いて熱が出ますと抗生物質をくださいといわれる方がいらっしゃいます。実はこれには大きな誤解があります。近頃は誤解をふせぐ意味もあり、抗生物質とは言わずに、抗菌薬と呼ぶようになりました。

抗菌薬は文字通り、菌、すなわち細菌を殺す薬であり、風邪の原因の95%以上を占めるウイルスには全く効果がありません。風邪症状から始まるマイコプラズマ肺炎ですら、抗菌薬を使う必要がない場合もあるのです。
また、風邪で弱ったところに細菌が感染して病状を悪化させるというまことしやかな話が出た時代もありましたが、それは科学的に証明されてはいません。

たしかに風邪をこじらせた、風邪がぶり返したと言われる急性の蓄膿症、副鼻腔炎を発症した場合には、熱も風邪の引き始めより高くなり、頭痛もひどく、咳も汚い痰もでて来ます。しかし、これは抗菌薬をのんだかのまなかったかにかかわらず発症するもので、抗菌薬による予防効果は証明されていません。
また、発症した急性副鼻腔炎に対し初めの1週間程度は、解熱剤だけで治療した場合と抗菌薬を一緒に内服した場合とで治るまでの日数に差がなく、抗菌薬を内服することで治りが良いという結果にはならなかったという研究結果がでています。

ただし、この症状は風邪なのかどうかという診断が大変重要で、高熱が出て喉が痛くて食事も通らないくらいだが、咳は出ないA群β溶連菌による扁桃腺腺炎では、適切な抗菌薬を適切な期間確実に内服しないと、病状が重症化したり、リウマチ熱などの合併症を引きおこすことがありますので、先ずはのどをしっかりとみてもらい、リンパ節の腫れが首の前側だけに限られるかどうか触診もしてもらい、迅速検査などを用いて診断してもらう事が重要です。

急性の下痢症もほとんどが抗菌薬の効果は証明されていません。細菌による食中毒も原則抗菌薬を必要としません。有名なO-157など菌内に恐ろしい毒をもっている細菌では、抗菌薬によって細菌を破壊するとむしろ毒があふれて危険状態になってしまいます。

人間の腸内には多くの良い細菌が住んでおり、自然に細菌のバランスがとれる様になっています。抗菌薬の使用はそのバランスをくずしてしまうため抗菌薬関連下痢症をおこすことがあります。
近年ではもともと腸の中に少数存在するクロストリディオイデス・ディフィシルという菌が偽膜性腸炎という抗菌薬関連下痢症を引き起こすことが問題となっています。重症化すると敗血症を起こし死に至ることもあります。

抗菌薬は肺炎や腎盂腎炎など適切に使えば確実に良くなる病気も沢山ありますが、使い方を間違えると無駄なばかりか、恐ろしい別の病気を引き起こすことがあるということを知っておいてください。

2月25日放送内容

前回は風邪に対する抗菌薬の効果の誤解についてお話ししましたが、今日は咳と咳止めに関するお話しからはじめたいと思います。咳は長く続きますと、体力を消耗し、とても辛いですし、まわりの方にも嫌な思いをさせてしまいます。ですから、なんとか薬を使用してでも咳を止めたいと思うことでしょう。
しかし、2007年にはこどもにおいて咳止めよりもハチミツのほうが咳を止める効果が高いというかなりしっかりとした研究結果がでました。最近大人でも同様の効果が報告されています。

日本では市販の風邪薬や咳止めにもコデインという麻薬系の薬剤が含まれていますが、これは咳をおこさせる脳の作用をブロックするのですが、中毒による呼吸停止のリスクがあるため米国ではこどもへの使用が禁止されました。
咳止めはあくまで対症療法であって、咳が出る病気を根本的に治すわけではありません。医師が病状に応じて処方するかどうかを決めるお薬であることをお知りおきください。

私は薬で胃が荒れやすいので、胃の薬を一緒にくださいと希望される方がいらっしゃいますが、今は薬で胃が荒れることが証明されているのは、痛み止めくらいです。
逆に自分は胃腸が強いから大丈夫と思っても、医師からこの薬を長期に内服すると胃が悪くなることがあるので、この胃薬を内服しましょうといわれたら、自己判断で中止することなく処方通りに内服してください。

次に睡眠薬、睡眠導入剤に関するお話です。
寝付けなかったり、眠りが浅かったりすると、翌朝、体調がおもわしくなかったり、気分が優れなかったりするため、眠れるお薬を処方してくださいといわれることがあります。従来の眠るためのお薬は、脳全体の興奮を抑える作用があるために、高齢者では転びやすくなる、認知機能が低下する、かえって日中だるくなるなどの副作用知られており注意が必要です。
また、睡眠の異常は、実は「うつ病」や他の病気に合併する抑うつ状態の症状の一つであることもあり、単なる不眠ではないことがありますので、安易に睡眠薬を飲めば良いというものではありません。

最後にお薬の飲み方の誤解についてお話します。
お薬の内服を忘れてしまったとき、翌日に二日分まとめて内服してしまう方がいらっしゃいますが、これは危険ですからやめてください。また、今日は血圧が高いからと処方された薬を一錠余分に内服したり、ステロイド剤や免疫に関わる薬剤を医師から特別な指示を受けていないのに、中断したり、いつもより多めに内服したりすることも危険ですので決して行わないようにしてください。

また、食前に内服、内服時間や曜日が決まっているものについては、そのお薬の効果や副作用を考えての設定ですから、必ず医師の指示を守りましょう。
お薬は、かかりつけ医が適切に管理を行います。希望や疑問があったら遠慮しないでお話しください。皆様のご理解が得られるようにお話しさせていただきます。

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