ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
4月29日放送内容(放送内容 資料はこちら)
〇 皮膚の常在菌と病原菌
夏になると皮膚の細菌感染症が増加します。皮膚の細菌には、健常な皮膚に存在して病原性を有さない常在菌と、皮膚に感染症を引き起こす病原菌とがあります。
常在菌の代表は、表皮ブドウ球菌と、ニキビの原因となる“ざ瘡桿菌”です。また、病原菌の代表は黄色ブドウ球菌とA群溶連菌です。表皮ブドウ球菌も増殖し過ぎると病原性となることがあります。
黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌の中には通常使われる抗生物質が効かないメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA,MRSE)もあります。また、A群溶連菌では治癒後の腎炎発症に注意が必要です。
〇 毛穴(毛包)と皮膚の表層(表皮)の細菌感染症
毛包即ち毛穴の細菌感染症で代表的なものは、せつ・毛包炎、すなわち「おでき」であり、1個の毛包に細菌感染を生じて膿みと痛みを伴います。
せつ腫症はやや稀な疾患で互いに離れた複数の毛包に、痛みを伴う「おでき」が多数出現します。
また、皮膚の表層に広く細菌感染が起きる疾患が伝染性膿痂疹すなわち「とびひ」です。伝染性膿痂疹はその殆どが水疱性膿痂疹と呼ばれる病型であり、夏の暑い時期に小児に発症します。膜の薄い水疱が次々に出現し、破れて 浅い傷(びらん)となります。通常痒みがあり、掻くことによってびらんが他の部位へと広がります。
一方、季節に関係無く起こり、成人にも発症する痂皮性膿痂疹という病型もありますが、こちらは極めて稀です。A群溶連菌が原因であり、病変部に厚い痂皮が多量付着して特異な外観を呈します。
また、乳幼児では時に、全身に「やけど」のような紅斑、びらんを生じ、全身性の発熱も伴うブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)という重症の疾患が起こる場合もあります。
〇 細菌性皮膚疾患の治療
細菌性皮膚疾患の治療は、抗生物質の内服、外用であり、重症例では点滴静注を行います。MRSA,MRSEでは通常使われるセフェム系ないしペニシリン系の抗生物質が効かず、ホスホマイシンなど上記とは別系統の抗生物質を用いて治療を行います。
5月6日放送内容(放送内容 資料はこちら)
〇 皮膚の深部(真皮、皮下組織)の細菌感染症
前回は皮膚の表層の細菌感染症について説明しましたが、今回は皮膚の深い部分に起こる細菌感染症について説明します。
最初に丹毒ですが、これは表皮の下の真皮に起こる細菌感染症で、悪寒、発熱を伴って、顔面や下腿に圧すると痛みのある腫れを伴った境界明瞭な鮮紅色の病変が生じます。A群溶連菌によることが多いため治癒後の腎炎発症に注意が必要です。悪寒や発熱を伴わない場合もあります。
次に蜂窩織炎ですが、これは皮膚の小外傷や 足趾の間の白癬などから細菌感染が起きて真皮の下の皮下組織にまで達し、広範囲の発赤、腫脹、局所熱感、痛みを生ずる疾患です。四肢や手足に起こりやすく、全身に悪寒や発熱を伴う場合もあります。原因は主に黄色ブドウ球菌ですが、イヌやネコに手などを咬まれた場合には、時にパスツレラ菌の感染により、重症で治りにくい蜂窩織炎を生ずることもあります。
また、粉瘤という皮膚の下にできた袋状の病変に細菌感染が起きた場合も病変周囲に蜂窩織炎が生じ、皮膚切開が必要なこともあります。瘭疽は手足の指趾に生ずる細菌感染症で、病変は皮下組織にまで及び、痛みが強く、爪周囲に膿が貯留して皮膚切開を行う場合もあります。巻き爪、小外傷や、ささくれをむしったりすることで発症します。
〇 皮膚の細菌感染症を防ぐために必要なこと
- 石鹸で手を洗い、手の清潔を保つ。
- 全身の皮膚も入浴時に石鹸を使って洗浄し、汚れをきれいに落とす。
- 手の爪を伸ばし過ぎない。
- 爪先に汚れがたまらないようにする。
- 巻き爪や足白癬がある場合は適切に対処を行う。
- 皮膚を掻かないようにする。
- 指のささくれをむしらない。
- 皮膚に傷ができた場合はきちんと洗浄して清潔を保つ。
- 免疫力が低下しないよう 適度の睡眠、休息を取り、過度の疲労を避ける。
- 糖尿病は皮膚の免疫力も低下させるので、早期の発見に努め、発見されたらきちんと治療を行う。
以上のことを心掛け、皮膚の細菌感染症を防ぐように努めましょう。