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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

認知症の早期発見と画像検査

2021年8月5日放送2021年8月12日放送

2021年8月5日放送

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2021年8月12日放送

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8月5日放送内容

近年、認知症の治療法が進歩し、早期診断・早期介入の必要性が認識されるようになり、画像診断は、認知症早期診断において欠かせないものとなっています。

認知症の画像診断として広く行われているCT・MRI・脳血流SPECTの検査の流れと、早期診断に有益であると考えられている脳血流SPECT検査の役割についてご説明したいと思います。

今回は保険適応が認められている日常の診療で利用することのできる代表的な画像診断であるCT・MRI・脳血流SPECTの検査の流れをお話しします。
認知症の診断でまず最初に必須であるのは、早い段階で治療可能な疾患を鑑別することです。そのためにはCTやMRI検査が推奨されます。

CTはエックス線、MRIは磁気を使った画像検査で、脳出血や脳梗塞など緊急な治療が必要な病気や、正常圧水頭症・硬膜下血腫などの認知機能低下を引き起こす治療可能な疾患を見つけることができます。この初期のスクリーニングでは、MRIがより詳細な情報を得ることが可能です。
アルツハイマー型認知症は、CTやMRI検査で萎縮した海馬がみとめられます。

脳血流SPECTは脳の血流の流れを調べる検査です。脳の働きが低下した場所では、血液の流れも低下しています。
アルツハイマー型認知症では、脳が縮んでくる前の早い時期から、脳の血液の流れが低下してくることがあります。脳の形態をみるCTやMRIではとらえられない早期の脳血流障害の検出、脳の機能の評価に有効です。

軽度認知機能障害と診断されるケースでは、その後の1年間の経過観察中に、約16パーセントが認知症に進行しています。
認知症の進行を遅らせることのできる、薬物療法の早期導入を可能にするためにも、脳が縮んでしまう前に、血流低下による機能障害の段階で異常をとらえることは、大変重要になってきています。

8月12日放送内容

アルツハイマー病は認知症の原因の約過半数を占めるといわれる重要な疾患であり、物忘れが目立つようになる数十年前から、脳内に異常なたんぱく質の蓄積が、無症状のまま進行性に始まっています。
新しい治療法の開発と並行して、アルツハイマー病を早期に診断することが重要な課題となっています。

アルツハイマー病には、その前駆期と考えられている軽度認知機能障害という概念があります。
この軽度認知機能障害とは、物忘れはあるものの、まだ認知症までに至っていない状態を示しています。具体的には、本人に物忘れの自覚があり、記憶検査では軽度の記憶力低下を示すが、認知症と診断されるまでには至らず、記憶以外の能力は正常で日常生活上はまだ問題なく過ごせる状態です。

通常の高齢者のアルツハイマー病の発症率が1年に1%であるのに対し、軽度認知機能障害の患者では年に10%~15%がアルツハイマー病に移行するとされ、先述したように、軽度認知機能障害はアルツハイマー病の前段階にあたるとされています。

脳血流SPECTは、脳の血流低下を通じて脳の機能を測ることのできる画像検査で、この軽度認知機能障害の時点で、アルツハイマー病に進むかどうかを早期に予測することに有益であると考えられています。
軽度認知機能障害の中でアルツハイマー病に移行したグループと移行しなかったグループで最も差異がみられる部位は、側頭葉と頭頂葉皮質であり、この個所の血流低下が早期からアルツハイマー病発症のリスクを予測し得ると言えます。

認知症をより早期に発見しようという試みが多くなされるようになっています。早期発見により進行抑制の治療の早期導入や、認知症の問題行動への対応や介護サービスの知識を得ることが可能になります。そのためにも、脳血流SPECTは、非常に有益な検査のひとつと言えるでしょう。

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