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高齢者の転倒の原因とその対策

2021年9月2日放送2021年9月9日放送

2021年9月2日放送

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2021年9月9日放送

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9月2日放送内容

思いがけない事故で亡くなった方は2020年には38069名いらっしゃるのですが、そのうち交通事故死が3713名に対し、転倒・転落・墜落が原因で亡くなられた方は9581名でとおよそ3倍だということをご存知でしょうか。しかもその約80%が転ぶことをきっかけにしており、年齢別では90%以上が65歳以上の高齢者です。

自宅で暮らしている高齢者の約3分の1は少なくとも年に1回転倒し、介護施設に暮らす高齢者は約半数が少なくとも年に1回転倒するといわれます。転倒したことがある人は、再び転倒しやすくなります。まずは、転倒の原因を知り、対策をたてることが重要です。

転倒は、動作やバランスに支障をきたす身体の状態、身の回りの状況、または思いがけない危険な状況によって起こります。まず、転倒の原因となる体の状況についてお話したいと思います。

身体の状態は、加齢、体力、病気、のみ薬によって大きな影響を受けます。転倒の危険性が増加するだけでなく、危険物や危険な状況に対する反応も悪くなるのです。
まずは脳神経系の不調によるバランス障害、歩行障害、足の感覚不良、筋力低下があります。その原因として、頸椎や腰椎などの背骨の変化は見過ごされがちです。
次に白内障や緑内障、加齢黄斑変性症などの視力障害も転倒の大きなリスクです。目からの情報は体のバランスの調整をおこなうのに大変重要なのです。
第3に血圧または脈拍数の障害です。特に高齢者では食後の低血圧がおこりやすく、転倒した高齢者の約23%は食後低血圧が原因であったと言われています。転びやすい人は自宅の自動血圧計で食後30分から1時間くらいに仰向けではかったよりも立ってはかった血圧が下がっていないかどうかを調べてみると良いでしょう。
また、不整脈のために一過性に意識がなくなり転倒することも転倒の原因です。
認知機能の低下も注意力に影響を及ぼすため転倒の原因となります。睡眠薬や睡眠導入剤、抗不安薬、一部の抗うつ薬、または血圧を下げる薬、利尿薬、心臓の一部の薬の使用も転倒のリスクを増加させる可能性があります。アルコールも同様に転倒の原因になります。

転びやすい人はかかりつけ医に相談することが大切ですね。

9月9日放送内容

今日は、転倒の原因となる身の回りの状況、思いがけない危険な状況、転倒予防対策についてお話しします。

身の回りには、様々な危険物に溢れています。滑りやすい敷物や床、通路の電気コード、段差のある歩道や壊れた縁石などがよく知られています。暗い照明もリスクです。

さて、思いがけない危険な状況についてですが、ほとんどの転倒は屋内で起こり、そのほとんどは動いている時、人がよろめき、つまずき、バランスを失うのは、動いている時だからです。例えばベッドやいすに移ったりそこから離れたりする時、トイレの便座に座ったり立ち上がったりする時、歩行時、階段の昇り降りの際は要注意です。
特に、急いでいたり、注意力が散漫になっていると、さらに危険になります。例えば、トイレに急ぐ時、特に夜間にめざめた時、照明が暗い時、あわてて電話に出る時、またはコードレス電話で話しながら歩くなどは危険が潜んでいます。

それでは、対策です。定期的な運動は重要です。筋力トレーニングは脚を強化し、歩行時の安定感を改善します。太極拳や片足立ちなどの運動はバランスをよくする助けになります。
運動能力は個人差がありますので、高齢者施設、スポーツクラブの専門家の意見を聞くとよいでしょう。
履き物にも気を遣いましょう。靴の着用が原則です。底が硬くて滑らず、足首をささえ、踵の低い靴が最適です。サンダルやスリッパは危険です。
座っている状態、横になっている状態からの立ち上がりは、ゆっくり行いましょう。そして一呼吸おいて動き始めることが大切です。めまいやふらつきの予防になります。

次に環境整備のポイントです。照明を明るくしましょう。照明スイッチを手の届きやすいところに付け替えたり、動作感知型照明を導入するのもいいですね。
階段には滑り止め加工と安全な手すりをつけましょう。階段面を見やすくするよう鮮やかな色のテープを貼るのも効果があります。通路には物をおかず、電気コードは通路上にでないよう、壁に這わせるか、床の敷物の下を通します。また、敷物は敷かない、敷く場合はつまずいたり、滑ったりしないようしっかりと固定します。日頃よく使うものは、腰から眼の高さに収納すると手が届きやすく転倒を防ぎます。

「転ばぬ先の杖」ということわざがありますが、転倒の原因と対策を十分にとって、明るいシニアライフを送って下さい。

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