ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
「腱板損傷」とその特徴について(放送内容 資料はこちら)
長びく肩の痛みで四十肩、五十肩だと思っていたら、「腱板損傷」ということがあります。腱板は肩を支える大切なスジの集まりです。筋肉が骨にくっつく所は、筋肉の伸び縮みの力を骨に効率よく伝えるため、硬めのスジになっています。肩甲下筋腱、棘上筋腱、棘下筋腱、小円筋腱という4つの筋肉の腱が集まって腱板を構成します。腱板損傷は、このスジが損傷した状態のことです。腱板損傷を放置すると損傷の範囲が徐々に広がり、痛みが長引きます。
腱板損傷の原因
- 年齢の問題(加齢性変化)
年齢は原因の1つです。年齢が増すにつれて、腱板が脆くなってきます。 - 外傷(ケガなど)
転んで肩を強く打ったという以外にも、転びそうになり手すりをぎゅっと掴んだときでも切れる方がいます。また、庭の植木鉢を持ち上げたときや、洗濯物を干そうと手を上げた時、なども腱板損傷を起こすことがあります。 - 使いすぎ
肩をたくさん動かす職種の方にみられます。
腱板損傷の症状・痛みの特徴
腱板損傷は多くの場合、肩を動かすことができます。それは、アウターマッスルと呼ばれる三角筋や僧帽筋などの存在があり、腱板が切れていても、それらが代わりに動かせるので、肩を動かすことができます。腱板4つの腱がすべて切れてしまうことは稀なので、1つのスジが切れても他のスジが頑張ります。ただし、大きく損傷した場合は、肩を上げることができません。
四十肩・五十肩と思いきや、実は腱板損傷だったというケースは非常に多いです。
簡単にこの四十肩・五十肩と見分けられたらいいのですが、非常に難しいです。
例外も多いですが、四十肩・五十肩と腱板損傷の違いについてスライドにしたので参考にしてください。
「腱板損傷」の所見と治療について(放送内容 資料はこちら)
腱板損傷のレントゲン所見
腱板はレントゲンに写りません。 そのため、整形外科でレントゲン撮影しても「骨に異常はありませんね」と言われることがあります。損傷部周囲の骨が変形していることがあるので、診断の助けになることがあります。
腱板損傷のMRI所見
MRIは非常に有効です。腱板損傷はもちろん、関節唇や関節包の具合もわかります。腱板損傷を起こして筋肉が働いていない期間が長いと、筋肉は萎縮して、間に脂肪が入り込んできます。これを脂肪浸潤と言います。この状態は、筋肉の働きが落ちてしまった状態と考えます。長びく肩の痛みがある場合は、MRI撮影を勧めます。
腱板損傷の治療
- 保存的加療(手術をしない治療方法)
損傷した腱板をくっつける薬、注射はありません。自然治癒もあまり期待できません。 リハビリの目的は損傷した腱板をくっつけることではなく、インナーマッスルの腱板とアウターマッスルのバランスを改善し、腱板損傷の悪化を防ぎ、症状を緩和することです。
薬は腱板をくっつけることはできませんが、痛みを抑えることができます。 内服や外用薬はその役割を担い、損傷部位の周囲に炎症を強く抑えるステロイドやヒアルロン酸を注射する方法は、痛みの軽減効果が高いです。
生活指導は、「痛みが少ない範囲で動かして良いので、通常の日常生活を送ってください」です。 - 手術療法
腱板損傷部分を骨に縫い付ける方法です。腱板損傷を根本的に治す方法と言えますが、全例手術をしなければならないということではありません。治療のゴールは人それぞれですので(痛みなく生活したい、スポーツに復帰したいなど)、治療のゴールをどこに置くかを主治医と相談することは非常に大事です。