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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

アトピー性皮膚炎について

2021年11月11日放送2021年11月18日放送

2021年11月11日放送

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2021年11月18日放送

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アトピー性皮膚炎の臨床症状とよく見られる感染症(放送内容 資料はこちら

アトピー性皮膚炎とは、日本皮膚科学会によれば、『増悪と軽快を繰り返す瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くは「アトピー素因」を持つ』となっています。つまりアレルギーの体質の人に生じる、慢性の痒い湿疹のことです。乳児期には顔面の湿潤性病変が主体で、成長とともにドライスキン、肥厚して苔癬化となります。

また、アトピー性皮膚炎の人にしばしばみられる感染症として、とびひ(伝染性膿痂疹)、みずいぼ(伝染性軟属腫)、ヘルペス(カポジ水痘様発疹症)があります。

とびひは主に黄色ブドウ球菌が原因で、湿疹をかいた傷に菌が増殖して拡大します。じくじくして水疱ができて急に広がります。アトピーの人は痒くてよくかくため、なりやすいです。適切な抗菌薬で治療しますが、抗生剤の効かないMRSAが原因のこともあります。

みずいぼはウイルスによる病気で、中央が凹んだボツボツができます。ポリポリかいて増えやすく、またカサカサ肌も増えやすい原因です。成長とともに治るので自然に治るのを待てばいい、という意見もありますが、保育園、幼稚園、学校などの集団生活、兄弟姉妹間で感染するので、少ないうちにつまんで取る方が早く治ると考えています。

ヘルペスは俗に「風邪のはな」とも呼ばれ、口唇ヘルペスが典型的な症状ですが、アトピー性皮膚炎の人に生じると、拡大重症化します。抗ウイルス薬の内服が有効ですが、重症例では入院することもあります。普段から外用薬などで湿疹をコントロールすることが大切ですが、ヘルペスの部位には、ステロイドやタクロリムスJAK阻害薬などは使用を控えます。

アトピー性皮膚炎の薬物療法(放送内容 資料はこちら

アトピー性皮膚炎の治療は光線療法もありますが今回は薬物療法の解説をします。

外用薬
ステロイド1990年代、治療の混乱した時代がありましたが、現在でもアトピー性皮膚炎治療の柱であることはかわりません。
タクロリムスステロイドとは異なるメカニズムで炎症を抑えます。顔面にも使えますが、外用初期に刺激感があるのが欠点です。
デルゴシチニブJAK阻害薬で、ステロイドやタクロリムスが使いづらいケースでも使用できます。
保湿外用薬尿素、ヘパリン類似物質、ワセリンなどがドライスキンの改善のため使用されます。
内服薬
抗ヒスタミン薬第2世代抗ヒスタミン薬が現在は広く使われています。
ステロイド内服急性増悪時に短期的に使用します。
シクロスポリン重症難治性の場合に2~3か月内服します。感染症、高血圧、腎障害などに注意する必要があります。
漢方薬東洋医学独自の「証」によって処方薬を決めるので、漢方に習熟した医師のもとで行われるのがいいと思います。
JAK阻害薬バリシチニブという薬が使用できます。結核や肝炎などの感染症がないことを事前に調べて、定期的に検査する必要があります。同効薬のウパダシチニブもアトピー性皮膚炎に適応が追加されました。
注射薬

IL-4/13の働きを抑えるデュピルマブが市販されました。使用するには一定の条件が必要ですが、2週間に1回の皮下注射で効果があります。改善したらインシュリンのように在宅で自己注射が可能で、病院に来なくても、自宅で治療をすることも可能です。

新しい薬剤

PDE4阻害薬の外用薬が市販される予定です。さらにIL-31阻害薬など新しい作用の薬剤が現在も開発中で、今後治療の選択肢がより広がると思います。

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