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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

背中・腰の痛み

2022年3月31日放送2022年4月7日放送

2022年3月31日放送

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2022年4月7日放送

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2022年3月31日放送

背中や腰の痛みは生活上気になる症状の一つだと思います。
実際、一生のうち85%の方が腰痛を経験すると言われ、医療機関を訪れる理由の上位5位に入ります。

私たち医師は首に近い方を背中、お尻に近い方を腰として、放っておいてはいけない病気についてお話ししたいと思います。

背中の痛みであれ、腰の痛みであれ、体を動かすと痛みが悪くなるようであれば、それは、筋肉、筋膜、関節、骨に関わる痛みであることがほとんどで、体を動かしても安静にしていても痛みの強さに変化がなければ、内臓の病気の痛みが背中や腰にあらわれていると考えられます。

脊椎およびその周辺に関わる痛みの中で、必ず医療機関を受診しなければいけないのは、安静にしても痛みが治まらない、夜間に痛みが増悪する、発熱がある、手足にしびれがあったり、力が入らない、急に便や尿の出が悪くなる、この半年で体重が5kg以上あるいは5%以上減っている場合です。
このような症状では、細菌による化膿性脊椎炎、椎間板炎といった感染症、肺がんや乳がん、前立腺がんなどの脊椎転移のおそれがあります。

また、ご高齢の女性に多いのですが、骨粗鬆症の方が勢いよく腰を下ろしたり、しりもちをついたりすると、脊椎の圧迫骨折をきたすことがあります。この時以来激痛になります。特に背中の真ん中あたり、具体的には胸椎の下の方が圧迫骨折をすると、痛みはお尻の上あたりに出ることがあります。圧迫骨折は当日にはレントゲンに映らないこともあり、医師による詳細な診察によってのみ明らかになることもあります。
こうした、脊椎の炎症や腫瘍、圧迫骨折は進行すれば神経を圧迫することになり、しびれや手足に力が入らない、便秘、排尿障害といった神経症状が出現するのです。

また、お若い方に多いのですが、安静にした後の方が痛みが強く、少し動いた方が痛みが和らぐ方がいらっしゃいます。脊椎には椎間関節という関節があり、そこに炎症をおこす脊椎関節炎という病気があります。尋常性乾癬という皮膚病や潰瘍性大腸炎、クローン病といった慢性の胃腸病の方によくみられます。こうした痛みは始まってから、日がたつにつれて痛みが強くなっていくことも多いので、そのような時はかかりつけ医に相談してみましょう。

2022年4月7日放送

今回は、内臓の痛みが背中や腰にあらわれることについてお話をします。

急に肩甲骨の間が痛むとき、よく見られるのは胃食道逆流症です。胸焼けや口の苦み、酸味を感じたり、のどがつまった感じを伴うことも多く、中には慢性の咳もみられます。
しかし、突然耐えがたい激烈な背中の痛みが始まって、その範囲が数秒から数分のうちに腰の方に向かって進むとき、時に胸やお腹の痛みまで出るときには、急性大動脈解離という緊急処置が必要な恐ろしい病気のことがあります。これは1分1秒を争いますので、すぐに救急車を呼びましょう。
同じように、突然、左右のいずれかの腰の痛みが突然始まり、だんだんとおなじ側の下腹が痛くなるときは、尿管結石の可能性があります。日中沢山汗をかいた日の夜中に始まることが多いのも特徴と言えましょう。

背中の真ん中から臍の真裏あたりまでにじわじわとした痛みが2週ほど続き、食欲もなく、体重も減っているときは、胃がんや膵臓がんの可能性があります。
内臓由来の痛みなので安静にしても動いても痛みが変わらないのが特徴ですが、膵臓がんでは前屈み姿勢になると少し痛みが楽になります。胃がんでは姿勢によって痛みがそれほど変わりません。
健康診断で貧血検査が正常範囲にあっても、前年に比べて数値が下がっている、たいしてダイエットをしていないのに体重が前年よりかなり減っている場合には、その痛みの原因が消化器系のがんである場合があり、健康診断のデータは前の年、その前の年と比較して見ることが重要です。

また、長らく発熱し、背中の痛みがあるが、体の動きによって痛みがよくもならず、悪くもならないとき、大動脈に炎症を起こしていることがあります。若い人では高安動脈炎、高齢者では巨細胞性動脈炎といわれます。
高安動脈炎では年齢に見合わない高血圧を生じたり、進行すると腕を動かすとつかれてしまう巨細胞性動脈炎では体中が痛くなるリウマチ性多発筋痛症をしばしば合併します。進行すると失明にいたることもあります。血液検査で炎症反応が高い値をとっているが、他に異常がみあたらず診断に難渋することがあります。

内臓由来の背中や腰の痛みが疑われる場合には、かかりつけの先生から大きな病院の総合診療科を紹介してもらうとよいでしょう。

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