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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

病院で扱っている放射線について、主に被爆の観点から

2022年8月4日放送2022年8月11日放送

2022年8月4日放送

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2022年8月11日放送

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2022年8月4日放送(放送内容 資料はこちら

まず最初に、医療における放射線利用の重要性について、です。
放射線には、人体をすかして見ることができる特徴があり、これを利用して様々な検査が行われています。
例えば、胸部レントゲン検査は、健康診断や病気のスクリーニング、経過観察として、日常的に行われている検査です。バリウム検査などの消化管造影や、体を生きたまま輪切りに見せるCT検査、PET/CT検査、血管走行を描き出す血管造影検査など、多くの放射線診断検査が医療の現場、特にがん診療を行う上で必要不可欠なものとなっています。
言うまでもないことですが、現代医療において放射線の利用は欠かすことができません。

一方で、放射線という言葉には、ネガティブなイメージ、漠然とした“怖い”という感情を引き起こすことも、事実だと思います。日本が唯一の被ばく国であるからかもしれません。2011年には東日本大震災により引き起こされた福島第一原発の事故が記憶にあるからかもしれません。
確かに多量の放射線を一度に浴びると、からだに様々な障害が現れます。

放射線の量を表す単位、ミリグレイという単位を用いてお話を続けます。数値が大きければそれだけたくさんの放射線を浴びたものと理解ください。

がんを治療するための放射線治療では1日1回2,000ミリグレイ程度、合計で60,000ミリグレイ前後の放射線を20~30回に分割して、1~2ヶ月間かけて照射します。
もし1度に18,000ミリグレイ以上の大量の放射線を浴びると、皮膚壊死や皮膚潰瘍の形成、ケロイドなどが引きこされることがわかっています。1度に5,000ミリグレイ以上だと脱毛、皮膚びらんがおこります。
なお、3,000ミリグレイ以下だとこういった急性期の障害は現れないと言われています。しかしながら、いくつかの病気が将来起こるかもしれないリスクが上昇すると言われています。

例えば、放射線被ばくにより、がんになるかもしれないリスクが上昇します。子供のころに受けた被ばくは、大人になってから受けた被ばくより影響が大きいこともわかっています。

次回は、どの程度の放射線被ばくにより、どのくらいリスクが上昇するかお話したいと思います。

2022年8月11日放送

前回は、

  • 現代の医療において放射線の利用は欠かすことができないこと
  • 多量の放射線を浴びるとからだに様々な障害が現れること
  • 3,000ミリグレイ以下では急性期の障害は起こらないが、将来がんなどの病気になるリスクが上昇するかもしれないこと

をお話しました。

今回は、放射線を被ばくすることによって引き起こる、がんになるかもしれないリスクについてお話します。
原爆被爆者12万人を生涯にわたって追跡した研究結果によりますと、100ミリグレイ以上2,000ミリグレイまでは被ばくした放射線量に比例して、直線的に発がんのリスクが上昇することがわかっています。100ミリグレイ以下では、放射線を浴びなかった人たちと比べて、発がんのリスクについて有意差はみられませんでした。
有意差が見られた100ミリグレイで、発がんのリスクは1.05倍と算出されています。

喫煙や飲酒、運動不足や野菜不足など、いろいろな生活習慣による発がんのリスク要素と比較すると、100ミリグレイ程度の放射線被ばくによる発がんのリスク1.05倍は、野菜不足による発がんのリスクと同程度であることがわかっています。

このことを放射線検査に当てはめて考えてみましょう。
一般的な放射線検査はほとんどが0.1~10ミリグレイ前後、多くても20ミリグレイ程度です。100ミリグレイ程度の被ばくであれば野菜不足と同程度の発がんリスクですから、とても少ない被ばく量だということがお分かりいただけるのではないでしょうか。さらに、もしも放射線被ばくが原因でがんが起きるとしてもそれは15~20年後です。
もし、がん患者さんに放射線検査をせずに不十分な治療を行ったら、症例にもよりますが、予後は数年以下でしょう。

以上から、がん患者さんへの放射線検査は、リスクよりも恩恵の方がはるかに高いということは明白です。

よって現在、診療用放射線の安全利用としては、患者さんが放射線診断検査を受ける回数等に制限を設けていません。その代わり、患者さんには一人一人、個別に被ばく線量を記録して管理しています。無駄な検査は避けるべきですが、検査が必要な時はむやみに恐れず、安心して放射線検査を受けていただきたいと思います。

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