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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

膀胱がんの診断と治療

2022年9月29日放送2022年10月6日放送

2022年9月29日放送

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2022年10月6日放送

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膀胱がんの診断(放送内容 資料はこちら

今回は膀胱がんの診断についてお話しします。

膀胱は下腹部にある尿を溜める袋状の組織です。その表面は尿路上皮細胞という細胞で覆われいて、そこにできるがんが膀胱がんです。

大腸がん、胃がん、肺がんなどに比べてあまりなじみが無いかもしれませんが、2019年の本邦のがん統計では臨床的に問題になる上皮内がんを含めて検討すると全体で7番目、男性に限ると5番目に多いがんです。またアメリカでも男性で4番目に多いがんとなっています。

膀胱がんを疑う自覚症状は血尿です。排尿時痛や、背中の痛みがある場合は膀胱炎や尿管結石などの良性疾患のことが多いですが、痛みや違和感などを伴わないのに突然血尿が出た場合は要注意です。膀胱がんがあっても血尿が自然と止まることはよくあります。したがって、症状がないのに血尿が出た場合は1度だけだからと放っておかず、泌尿器科を受診することが早期発見には重要です。

膀胱がんの危険因子は①男性②喫煙③高齢の三つです。男性は女性の3倍多く膀胱がんになります。煙草が関与するがんとして有名なのは肺がんですが、実は膀胱がんも煙草が原因となります。なぜなら、煙草の有害物質は肺で吸収された後、尿に排泄されるからです。また、膀胱がんは40歳以上で急に多くなります。以上より、煙草を吸う高齢の男性はとくに注意が必要です。

さて、血尿があって勇気をもってクリニックに来ていただいた場合、問診と尿検査、超音波検査を行い、膀胱がんが疑われる場合は膀胱鏡検査を行います。

これは胃カメラよりずっと細いカメラ(直径5mm程度)です。尿道から入れるときに少し痛みがありますが、検査自体は5分程度で終わります。検査で膀胱がんが見つかった場合は内視鏡手術が必要となります。

膀胱がんの治療(放送内容 資料はこちら

今回は膀胱がんの治療についてお話しします。

血尿で泌尿器科を受診し、膀胱鏡でがんが見つかった場合、1週間弱の入院で内視鏡手術(TURBT)が行われます。これは麻酔をかけて電気メスで腫瘍を削り取る治療で、治療とともに深達度(根っこの深さ)の診断も兼ねています。膀胱がんの8割は表面にとどまる筋層非浸潤性膀胱がんで、この手術で完治することができます。

ただし、膀胱がんの困った点は再発が非常に多いことです。そこで、再発を抑えるために退院後、外来で週に1回、6~8回程度膀胱内に薬物を注入する場合があります。薬物には抗がん剤の他BCGが用いられることがあります。この抗がん剤は点滴するのではなく、膀胱に注入するため副作用は少ないです。また、不思議なことに結核の予防注射に使うBCGが膀胱がんの再発を抑えることが昔から知られています。

このような再発治療を行ってもおよそ半数の方が手術後に再発します。特に再発は術後2~3年に多いため、その間は3~6か月毎に膀胱鏡検査をしっかりうけていただくことが大切です。

一方、膀胱がんが表面より深く、筋肉まで達していた場合、内視鏡治療で治療しようとすると膀胱に穴が開いてしまうため完治できません。このような場合は膀胱を全部取る膀胱全摘術が必要になります。膀胱を取った場合は新たな尿の出口をおなかに作り、パウチを貼った生活になることがあります。年齢や合併症などで手術が難しい場合は放射線治療や抗がん剤治療が行われることもあります。

すでに転移がある場合は、残念ながら手術や放射線で完治することは困難です。しかし、近年、従来の抗がん剤治療に加えて、免疫チェックポイント阻害薬など新たな薬剤が徐々に増えてきています。

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