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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

切らずに治すがんの放射線治療・テクノロジーの進歩がもたらす高精度放射線治療

2023年3月2日放送2023年3月9日放送

2023年3月2日放送

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2023年3月9日放送

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切らずに治すがんの放射線治療(放送内容 資料はこちら

我が国の死亡原因の第一位であるがんは、年々増加傾向にあり、一生のうちに2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなる身近な存在です。

がんの主な治療法としては、手術、抗がん剤などの薬物療法、そして放射線治療があります。
その中でも、放射線治療は手術に比べて体への負担が少なく、薬物療法と違って全身への影響も少ないため、お年寄りや他に重い持病を持った方などでも、比較的安全に治療を受けることができます。その一方で、手術に匹敵する治療効果をもたらしたり、手術ができないほど病状が進んでいても、有効な治療手段として選択できたりするのも放射線治療の良いところです。

また、手術と比較して、体への負担が少ないだけでなく、病変を切らずに治すため、その臓器が本来持っている働きやかたちを残すことができます。そのため、治療後も治療前と変わらない生活を送ることができるのも、放射線治療の大きな長所です。

がんの放射線治療には、多くの場合、ビーム状の放射線を体の外から病変に向かって照射する方法が取られます。これには、リニアックと呼ばれる大型の治療機器などが使われますが、放射線が照射されている間、痛みや熱さなどを感じることはなく、楽に治療を受けることができます。

通常、この治療を1日1回、平日毎日受けていただきますが、全体の治療回数はがんの種類や部位、病状などによって1回〜40回程度と様々です。1回の治療時間は10分程度であることが多く、体への負担も少ないことから、仕事を続けながら通院で放射線治療を受けられる方も大勢おられます。このように、生活スタイルを変えることなく受けられる放射線治療の需要は、今後、益々増えていくものと思われます。

テクノロジーの進歩がもたらす高精度放射線治療(放送内容 資料はこちら

がんの放射線治療は、テクノロジーの進歩とともに大きく発展してきました。この進歩は、放射線治療の機械や照射技術を発展させ、近年、高精度放射線治療と呼ばれる病変に正確に放射線を照射し、正常な臓器の被ばくを極力抑える新たな治療法を生み出しました。
X線を使った高精度放射線治療の代表的なものに、定位放射線照射と強度変調放射線治療があります。

定位放射線照射は、体の外から病変に向かって様々な方向よりピンポイントで放射線のビームを照射し、病変を正確に狙い撃ちする治療法です。一度に高線量の放射線を照射することが可能なため、高い治療効果が期待できると同時に、治療回数も1回〜4回程度ですむことが多く、治療期間が短いのも良いところです。
早期の肺がんなど比較的小さな病変に用いられますが、その治療成績は手術とほぼ同じとされています。

一方、強度変調放射線治療は、放射線のビームの中に線量の強弱を付けることにより、体内に理想的な放射線の線量分布を作り出すことができる最先端の治療法です。
この治療では、複雑な形をした病変であっても、病変全体に高い線量の放射線を照射しつつ、病変周囲の正常臓器の被ばくを最低限に抑えることが可能なため、治療効果の向上と副作用の軽減を図ることができます。

治療期間は定位放射線照射より長くなることが多いものの、大きな病変など定位放射線照射では副作用のリスクが高まる場合でも、強度変調放射線治療では比較的安全に治療できることが多く、病状により使い分けることが可能です。

これからも、放射線治療はテクノロジーの進歩とともに発展を続け、より高い治療効果をもたらすとともに、副作用の少ない安全性に優れたがん治療を提供していくものと思われます。

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