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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

整形外科領域におけるPRP治療(多血小板血漿治療)

2024年3月28日放送2024年4月4日放送

2024年3月28日放送

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2024年4月4日放送

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2024年3月28日放送(放送内容 資料はこちら

近年、変形性膝関節症や、筋肉や腱、靭帯損傷の治療の新しい選択肢としてPRP治療が注目されております。当院は、横浜市の整形外科クリニックとしては初であった2017年からPRP治療を行っており、その経験についてお話できればと思います。

PRP治療とは、platelet rich plasmaの略で日本語では多血小板血漿治療という治療になります。患者さんの採血から遠心分離器を用いて不要な赤血球や白血球を取り除き、濃縮した血小板を抽出し、関節や損傷部位に注射をするという治療で、血小板が出す成長因子を利用します。もともとは美容外科領域や歯科領域などで使われておりました。

効果としては、比較的即時的な効果として抗炎症作用や疼痛低減効果がありますが、長期的には組織の再生を促進する作用があることが人臨床でも確認されています。
組織が再生するには、「足場材料」「信号」「細胞」の3つの要素が必要と言われており、PRP治療では、血小板が活性化した際に放出する成長因子を患部に大量に投与することでダメージを負った組織の細胞に刺激を与え、組織の修復を促します。

そもそも、組織は異化と同化といって、組織を壊す働きと再生する働きのバランスが取れています。そのため組織が損傷した際、健康体では両者のバランスが取れており、自然に治癒するのですが、変性が強くなった腱靭帯の損傷や、変形性関節症などはそれらのバランスが崩れ、自然には治りにくくなっています。
成長因子は組織の同化を助け、正常なバランスへ復帰する手助けをすると言われており、その成長因子を出すのが血小板であり、PRP療法では血小板が活性化した際に放出する成長因子を患部に大量に投与することで、ダメージを負った組織の細胞に刺激を与え、組織の修復を促します。

2024年4月4日放送(放送内容 資料はこちら

整形外科領域でのPRPの適応例としては、各関節の変形性膝関節症、軟骨損傷や半月板損傷、また軟部組織として、アキレス腱炎やテニス肘といわれる上腕骨外側上果炎、足底筋膜炎、各種靭帯損傷や肉離れなどに適応があります。
当院では手術は行っておりませんが、上記疾患に対する手術中にも利用されることがあります。

PRPの種類として、現在色々なタイプのものが出ておりますが、一長一短でどれが特別優れているというものはありません。
また、PRPの問題として、まだ確立された治療ではないこと、保険適応がなく、病院により値段にも3万円~20万円とばらつきがあること、厚生労働省の認可を取得するのに労力を要すること、厚労省への定期報告の労力、費用がかかること、最近では商業ベースのクリニックも多く、メディアなどで効果を過度に伝えられていること、などが挙げられると考えています。

当院では片側4万円、両側で7万円と当初より低価格で提供しています。厚生労働省の認可を受けると、自前の施設で遠心分離などを行いそのまま治療を行えるのですが、認定施設でない場合は外部委託となり、その場合に病院側も高額な費用がかかり、それにより値段にばらつきがあるものと思われます。
当院では、PRP治療に対する利益はほぼありません。患者さんの一つの選択肢として使っていただければと考えています。

当院では、ラグビーやバスケット、野球のプロ選手も多数PRP治療を行っておりますが、有効率は60%程度であり、やはり全員が全員効果があるとは言いづらい治療ではあります。しかしながら、痛みが0に近くなった患者さんも多くいらっしゃいますので、ご興味がある患者さんは来院していただければと思います。

近年、再生医療などが注目される中で入口となるPRP治療となりますが、今後更なる発展を願っております。

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