ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2024年6月6日放送(放送内容 資料はこちら)
尿漏れは医学用語では尿失禁といい、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことと定義されています。40歳以上の女性の4割以上、また、男性の約2割が経験しており、実際に悩んでおられる方は大変に多いです。
尿失禁は4つに分類されます。
一つ目は、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまう腹圧性尿失禁です。
腹圧性尿失禁は女性の尿失禁の中で最も多く、女性の尿失禁のうちで8割を占めるといわれています。この腹圧性尿失禁は骨盤底筋群という骨盤底の筋肉が緩むために起こり、加齢や出産を契機に出現します。くしゃみ、咳、階段を下るとき、重いものを持つときにもれるのが主な症状です。
二つ目は、急に尿がしたくなり、我慢できずに漏れてしまう切迫性尿失禁です。
この失禁では外出中や乗り物に乗っている時などに大変に困ります。台所仕事でお皿洗いをしているときに急な尿意があり困るのもこの種類の失禁です。
三つ目は、尿を出したいのに出せずに、尿が少しずつ溢れ出てしまう溢流性尿失禁です。
この溢流性尿失禁では、尿が出にくくなる排尿障害が必ずあります。尿が出にくくなる病気としては、高齢男性特有の前立腺肥大症や膀胱を動かす神経が障害される病気があります。
四つ目は、運動能力の低下や認知症が原因となって、トイレでの排尿ができなくなる機能性尿失禁です。
排尿機能が正常であるにも関わらず、トイレ移動や排尿の姿勢をとるまでに時間がかかってしまうこと、またトイレの認識ができなくなってしまうことが原因です。
病院では尿失禁の患者さんが、これら4つのどの種類に該当するのかを診断し、それぞれの状態や原因に応じた治療を提案しています。
2024年6月13日放送(放送内容 資料はこちら)
前回は尿漏れの4つの種類についてお話ししました。今回は尿漏れの診断と治療についてお話しします。
病院ではまず問診と体に負担のない尿検査や超音波検査で診断を行ない、これらの診察によって多くの場合で診断がつきます。また必要な場合に限って、内診台での診察、膀胱鏡検査などを行います。
軽い腹圧性尿失禁の場合は、骨盤底筋訓練という尿道のまわりにある筋肉を強くする体操で、改善が期待できます。また、肥満の方や最近急に太った方では、減量が有効なことがあります。
骨盤底筋訓練や減量では改善しない場合、かつ、漏れの量が多い場合には、メッシュという人工的なテープを尿道の下に通して、尿道を支えることで漏れを減らす手術を行うこともあります。
切迫性尿失禁の治療には、抗コリン薬やβ3受容体作動薬といわれる膀胱の収縮を抑制する薬が有効です。このほかにも、過剰な水分摂取の制限、カフェインの制限、骨盤底筋体操、尿意を少し我慢する訓練などの行動療法を併用します。症状の重い方に対しては、仙骨神経刺激治療やボツリヌス毒素の膀胱壁注入治療も行われています。
溢流性尿失禁の治療には、原因となる排尿障害の治療を行います。男性の前立腺肥大症の場合は尿道を広げる薬や尿道から前立腺を削る手術を行います。薬物治療や手術で改善しないような場合は、カテーテルという管を用いた治療が必要となることもあります。
機能性尿失禁の治療には、介護や生活環境の見直しを行います。
このように尿失禁の種類や程度により、治療法は様々です。恥ずかしがったり、年齢的なことと諦めたりせずに、どうぞ泌尿器科専門医にご相談ください。