ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2025年2月13日放送(放送内容 資料はこちら)
狭心症、心筋梗塞の治療は、1980年代から劇的な進歩を遂げ、以前から行われてきた薬物療法、冠動脈バイパス手術療法に加えて、冠動脈インターベンション治療(経皮的冠動脈形成術)が導入されました。
狭心症とは、階段や坂道を上ったりする運動時に胸部圧迫感、胸痛、息切れなどを生じる病気で、心臓の栄養血管である冠動脈に動脈硬化による狭窄があるために、心臓の筋肉に栄養や酸素が十分供給されず症状が生ずる病気です。通常は、運動をやめて休むと改善します。しかし休んでも改善しない場合は不安定狭心症と言って次に出てくる急性心筋梗塞に移行する危険な狭心症となります。
安静時に胸痛が生ずる病気として、冠攣縮性狭心症があります。ストレスや寒冷刺激、喫煙などにより冠動脈が急に短時間捻れたように収縮し、安静時に胸痛が生じる病気で多くは自然にまたは薬物で攣縮は消失し正常の冠動脈に回復します。最近わかってきたのが、細小血管狭心症といって、冠動脈は一見正常ですが非常に細い末梢の血管に異常があり胸痛が生じる病気です。普通の治療で改善しない胸痛の場合、入院して詳しく検査することにより診断されます。
急性心筋梗塞は、冠動脈の狭窄が閉塞に進展してしまい、心臓の筋肉に酸素や栄養成分が供給されず、心臓の筋肉が死んでしまう病気です。狭心症で死亡する可能性はほとんどありませんが、急性心筋梗塞では1980年代以前は30%以上、現在緊急カテーテルインターベンション治療などを適切に受けると5%以下の死亡率です。
冠動脈インターベンション治療とは、太ももの付け根や、脈を取る手の橈骨動脈から直径2~3mmのビニール管であるカテーテルを挿入し造影剤を注入しながら、冠動脈の狭窄を風船やステントと呼ばれるステンレス製円筒状金具で狭くなったまたは塞がった内腔を広げる治療です。
この治療の導入により、急性心筋梗塞、不安定狭心症の治療は劇的に改善しました。死亡率は30%から5%以下に、入院期間も1ヶ月以上から7日以下に、心臓リハビリテーションの普及もあり、心筋梗塞を起こしても普通の生活、仕事に戻ることができるようになりました。冠動脈インターベンション治療が非常に有効であったため急性心筋梗塞及び不安定狭心症では、冠動脈インターベンション治療を優先することになりました。
2025年2月20日放送(放送内容 資料はこちら)
前回お話ししたように、冠動脈インターベンション治療は急性冠症候群と呼ばれる急性心筋梗塞や不安定狭心症では非常に有効な治療となり優先的に行われるようになりました。冠動脈は3本あるのですが、安定冠動脈疾患でも冠動脈の1本、2本の狭窄では冠動脈インターベンション治療、冠動脈3本、左主幹部病変では冠動脈バイパス手術とされてきました。しかし2022年より安定冠動脈疾患の診断治療概念が変更されました。
安定冠動脈疾患は症状をよく聞き症状を分析し、その検査前確率を臨床的尤度、心電図、心エコーなどの通常検査の内容を加味して修正検査前確率を算出。それが低度では特殊な検査は行わず経過観察、中等度以上では適切な非侵襲的検査(冠動脈CT、機能的冠動脈CT, 負荷イメージングRI検査など)を行い、左冠動脈の根元である左主幹部の病変または同等の病変が疑われる場合は、侵襲的冠動脈造影検査治療を行います。冠動脈CTは、造影剤を点滴しながらドーム状の機器に入りコンピューター断層撮影を行う検査法です。RI検査は、弱い放射線物質を注射し心臓の筋肉にその放射性物質がどの程度集まるかを調べる検査です。いずれも外来で施行可能です。
その検査で左主幹部病変が認められた場合は、冠動脈インターベンション治療または冠動脈バイパス手術を選択します。左主幹部病変が否定された場合は、ほかに狭窄がいくらあっても、まず症状緩和目的で硝酸薬、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、心血管イベント予防目的で抗血小板剤療法、脂質低下療法など至適内科療法を行います。数週間の至適内科療法、経過観察の上で症状が悪化した場合、侵襲的冠動脈造影検査および治療を考慮することになっています。侵襲的冠動脈造影検査時には、冠動脈内圧なども測定し、解剖学的、生理的検査を行い治療方針を決定します。
とにかく、胸が痛い、胸が圧迫される、息切れがあるなど狭心症、急性心筋梗塞の診断は、症状が重要です。症状のある方、心配な方は是非、主治医、専門医にご相談ください。