ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
2025年3月27日放送(放送内容 資料はこちら)
最初にアトピー性皮膚炎でお困りの患者さんにお伝えしたいのは正しく治療すれば今よりずっと良くなりますよということです。
諦めることは全くありません、なぜならアトピー性皮膚炎の発症するメカニズムが近年急速に解明されたからです。それにより新しい治療薬を使用できるようになりました。
また従来の治療薬も使用方法を工夫したり正しく理解することにより、上手に皮膚炎をコントロールできるようになりました。
従来の治療の代表的なものはステロイド剤の外用療法です。外用薬のメリットは他の臓器に対する副作用がない事と直接患部に塗れる効果的な治療法であることです。
しかし今までステロイドを塗っても上手くコントロールできなかったり、一時的に良くなるけれど止めるとすぐ悪くなるので意味がないと考えている方もいらっしゃると思います。
確かに外用薬は患者さん自身が行う治療ですので塗り方で効果に差が出てしまいます。
そこで外用薬をどの強さの薬をどの部位にどれぐらいの量塗るのかを患者さんに理解してもらうことがとても重要です。特に外用量に関しては少なすぎることがほとんどです。
皮膚炎が体の広範囲にみられる場合は1回の外用量は5gチューブだと1~2本使用します。
そして赤み、痒みが取れても触ってみてざらざら感やごわごわ感が残るうちは外用を続けます。なぜなら一見正常に見える部位にも隠れた炎症が残っているからです。
そして肌がつるつるしてくれば外用を急に中止するのではなく1日おき、3日に1回、1週間に1~2回と徐々に減らしていきます。このような外用方法をプロアクティブ療法と言って慢性の病気であるアトピー性皮膚炎をコントロールしていくのとても有用な治療法です。
2025年4月3日放送(放送内容 資料はこちら)
アトピー性皮膚炎に対して長らくステロイド外用薬を中心とした治療が行われてきましたが実際適切な治療を行ってもコントロールできない方は一定数いらっしゃいました。以前は十分な治療選択肢がありませんでしたが今ではそのような方に使用できる治療薬が登場しました。
新しい治療薬が登場した背景としてアトピー性皮膚炎の病態の研究が進んだことが関連しています。
アトピー性皮膚炎の病態は皮膚のバリアー機能の障害、アレルギー炎症、痒みの3つの因子が関わり合いながら悪循環をきたしています。
免疫細胞が生み出すサイトカインという蛋白質がこの3つの因子と関わっていることが明らかになりました。
それにより抗体医薬品(生物学的製剤)とヤヌスキナーゼ阻害薬の2つの治療薬が登場しました。
抗体医薬品はアトピー性皮膚炎の原因となっているサイトカインに対する抗体をつくって体内に入れて治療を行う薬です。
ヤヌスキナーゼ阻害薬はヤヌスキナーゼという酵素をブロックすることによりサイトカインの分泌を抑える薬です。
どちらの薬も外用治療で効果が得られなかったほとんどの方の皮膚症状と痒みを改善できます。
抗体医薬品は皮下注射で現在は4種類、ヤヌスキナーゼ阻害薬は内服薬で3種類あります。
それぞれ治療効果、副作用、使用できる年齢などに差がありますので主治医の先生とよく相談して決めるとよいと思います。
アトピー性皮膚炎は慢性の病気ですので患者さんは一人ひとりに今までの治療や症状の変化の歴史があると思います。治療の最終的な決定はご本人であり保護者の方ですが皮膚科医は常にアトピー性皮膚炎についてアップデートしています。どうか頼りになる伴走者として皮膚科医をご利用ください。