ラジオ番組 みんなの健康ラジオ
放射線診断医について(放送内容 資料はこちら)
「放射線科医」や「放射線診断医」という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。放射線科は、内科や外科、小児科と同じく診療科の一つです。放射線科は主に以下の二つの部門に分かれています。
一つは、X線写真(レントゲン写真)、CT、MRI、PETなどの画像を用いて病気を診断する「画像診断部門」。もう一つは、放射線を用いたがん治療を行う「放射線治療部門」です。画像を使った局所治療(インターベンショナルラジオロジー:IVR)を専門とする放射線科医もいます。
私は、画像診断を専門とする「放射線診断医」です。放射線を用いた検査(レントゲン、CT、血管造影、核医学検査など)に加え、MRIや超音波検査といった放射線を使わない画像検査も担当しています。
患者さんを診察した主治医が画像検査を依頼すると、私たち放射線診断医がその画像を読影し、結果を「報告書(レポート)」として作成します。主治医はこの報告書と画像、そして他の検査結果などを総合的に判断して診断を行い、治療方針を決定し、患者さんに説明します。
画像検査にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴や適した用途があります。主なものにレントゲン撮影、CT、MRI、超音波検査、核医学検査、血管造影、消化管造影などがあります。何を調べたいか、どのような病気を疑っているかによって、最適な検査法を選択します。
どの検査にも得意・不得意があり、すべてを1回の検査で診断できる「万能な検査法」はありません。そのため、検査の結果によっては追加の検査を行うこともあります。
また、検査による患者さんの負担もさまざまです。レントゲン撮影のように短時間で痛みも少ない検査もあれば、長時間を要したり、注射や薬剤の使用を伴うものもあります。できる限り患者さんの負担を少なくしつつ、正確な診断につながるように、メリットとデメリットのバランスを考えた検査選択が行われます。
使用する薬剤や手技に伴うリスクについては、検査前に必ず説明を行い、患者さんの同意を得たうえで実施されます。検査が安全に行えるよう、放射線技師や看護師など多職種と連携し、日々の診療にあたっています。
小児病院での放射線診断医の役割(放送内容 資料はこちら)
私は現在、小児専門病院で放射線診断医として勤務しています。生まれたばかりの赤ちゃんから中高生くらいまでのお子さんの検査や診断に携わっており、少数ではありますが、成人年齢の患者さんを検査することもあります。
画像診断の手順や考え方は、基本的には大人と子どもで大きくは変わりませんが、検査の選択や安全面への配慮などに違いがあります。小さなお子さんは検査を嫌がって泣いたり暴れたり、じっとしていられなかったりすることが多いため、検査中の落下や転倒などのけがに注意が必要です。また、体が動いたり泣いたりすると、診断に適した画像が得られないこともあります。
検査室では、撮影を担当する放射線技師が、安全に配慮しつつ適切な撮影ができるよう、装具などを使って体を固定しますが、必要に応じて薬を使って眠らせる「鎮静」を行うこともあります。検査によっては、お気に入りの動画や音楽を視聴したり、親などの家族が付き添ったりすることで、落ち着いて検査を受けられる場合もあります。
画像検査にはさまざまな種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあることは、前回お話しした通りです。特に小児の検査では、必要最低限の検査で診断にたどり着けるよう、検査法の選択を慎重に行う必要があります。放射線診断医は各検査法の利点と限界を熟知しており、検査法の選択に関して担当医からの相談に応じることも、重要な役割のひとつです。
特に小児では、放射線による被ばくをできるだけ少なくしたいという考えが強くあります。もちろん、診断や治療に必要であれば放射線を用いた検査を行いますが、放射線量が多すぎたり少なすぎたりしないように検査の質を保つこと、また、放射線を使わない超音波検査やMRIを積極的に取り入れることも重要です。さらに、検査を依頼する医師や小児医療に関わるスタッフ放射線被ばくやその低減の考え方を伝えることも、小児病院における放射線診断医の大切な役割です。
患者さんやそのご家族と直接関わる機会は多くありませんが、縁の下の力持ちとしての放射線診断医の仕事について、少しでも知っていただければ幸いです。