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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

人はなぜアルコール依存症になるのか

2026年2月5日放送2026年2月12日放送

2026年2月5日放送

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2026年2月12日放送

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2026年2月5日放送(放送内容 資料はこちら

アルコール依存症は、お酒を飲むことを自分でコントロールできなくなってしまう心の病気です。20歳以上になれば、誰もがお酒を飲むことが法律で許されるようになります。
厚生労働省の調査では、日本人の男性の75%、女性も55%の方が過去1年間に飲酒したことがあると報告されていますが、当然のことながら、ほとんどの方はアルコール依存症にはなりませんよね。過去1年間にアルコール依存症が疑われる人は、日本全国でおよそ300万人と推計されていますが、おおよそ20歳以上の日本の人口を1億人とすると、これは3%程度にすぎません。
同じお酒を飲んでいるのに、3%の人たちだけは、アルコール依存症を発症してしまうのでしょうか。

もちろんアルコール自体が依存性を持っていることは確かなのですが、100人のうち97人は同じお酒を飲んでいても依存症にならないわけですから、お酒の成分だけでは依存症になってしまうことを説明することができません。
飲んだことのある方なら誰でもご存じでしょうが、お酒を飲むと、頭がぼーっとしたり、ふわっと心が軽くなったりしますよね。さらにどんどん飲み続けると、よほどお酒に強い方でなければ、いつかは眠くなって、寝てしまいます。
アルコール依存症になりやすい人は、このような脳を眠くさせてくれるお酒の作用が特に必要な人、と言えます。それはつまり、普段からイライラしがちだったり、長いこと不眠症に悩んでいたり、強い不安や緊張を抱えがちな方と言い換えることもできます。

イライラしたり、不眠に苦しんでいる方全員がアルコール依存症になるわけではありません。そのような悩みを持っている方の中で、特に人に自分の悩みや困っていることを相談することが苦手で、周囲には自分が大丈夫だと、つい強がってしまう方、周囲の方がもっと大変なんだから、自分が弱音を吐くわけにはいかない、と気持ちを抱え込んでしまう方、あるいは家族や友人、同僚たちは当てにならない、相談してもどうせ意味がない、と人に頼ることを諦めてしまっている方、そういう方が、誰にも頼らず、一人で自分の辛い感情や不眠の苦しみを解決しようとしがちです。
そんな時、お酒がもし嫌な気持ちや不眠の悩みを解消してくれたなら、その人はどんなに困っても、ますますお酒だけに頼ることになってしまうのです。

2026年2月12日放送(放送内容 資料はこちら

アルコール依存症は、困った時に人を頼ることができず、アルコールにしか頼れない病、と言い換えることができます。なぜ一部の人たちは、人を頼れなくなってしまうのでしょうか。大半の患者さんたちは、実は子どもの頃から、いろいろな理由で人を頼る練習が足りないまま大人になってしまった歴史を持っています。

たとえば学校で何度もいじめられた体験を持っている方。家族の中で病気がちな人がいて、子どもの頃から自分が遊んだり楽しんだりするよりも、親みたいにその人の世話をしなければならなかった方、これはいわゆる「ヤングケアラー」と呼ばれる人たちですね。
あるいは両親から頻繁に体罰など、とても厳しいしつけを受けてきた方や、勉強やスポーツでとても良い成績を上げ続けることを期待されてきた方。他にも、小さい頃から生まれつきひどく落ち着きが無かったり、周囲と上手にコミュニケーションを取ることができなかった、いわゆる発達障害と診断される方々もいます。

子どもの頃から、そういった何らかの理由で周囲の人たちに、ほどよく甘えたり、頼ったり、助けてもらって心や体が楽になった、という体験をするチャンスが少なくて、一人で我慢することが多かった方は、大人になって、心の悩みや不眠の苦痛を抱えた時、人ではなく、アルコールの「心を軽くしたり眠くしたりしてくれる作用」に頼りがちになってしまうのです。

ひたすらお酒だけに頼る生活を続けていると、次第に体がお酒に慣れてしまって、もっと量を増やさないと、酔えなくなります。やがて大量にお酒ばかり飲む日々になってしまい、体を壊し、遅刻や欠勤、寝たきりの日々が増え、精神的にも不安定になったり、不眠がかえって悪化したり、ひどい時には幻覚を見たりけいれんを起こしたりします。
できればそうなる前に、ご家族や友人、職場の方が本人のお酒の問題に気付いたら、区役所の福祉保健センターや精神科クリニック・病院にご相談ください。依存症の治療は年単位かかる場合がほとんどで、入退院を何度も繰り返すことも決して稀ではありません。
ご家族は焦らず、家族会や家族教室などに参加して、先輩家族や専門家のアドバイスをもらいながら、ほどよい距離感で患者さんを見守り続けてください。

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