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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

精神障がい者の方のリカバリーを考える

2019年11月28日放送2019年12月5日放送

2019年11月28日放送

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2019年12月5日放送

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11月28日放送内容(放送内容 資料はこちら

最近、精神障がい者の方の治療のゴールが変わってきています。
治療のゴールとして、以前はレミッション(寛解)にのみ焦点があてられた治療が行われてきましたが、近年はその先の回復(リカバリー)に焦点をあてることが望ましい、という考え方に変化してきています。
具体的にレミッションとは代表的な症状である幻覚妄想などの精神病症状、引きこもりなどの陰性症状、解体症状がどれも軽度である状態が6ヶ月以上持続している状態を言います。
しかし、このレミッションに達している方はまだまだ少なく全体のおよそ30パーセントと報告されています。

さらに、高いゴールであるリカバリーとは先ほどの症状がいずれも軽度であることのみならず、就労や就学できていること、自立して生活していること、社会的人間関係が維持できていることなどの条件を満たし、かつ2年以上維持できている状態を言います。
しかし、こうしたゴールに到達している患者さんはさらに少なく、全体のおよそ10パーセント程度です。
これは私たちが十分な医療を提供できていないということで、とても残念に思います。

一方で今お話ししたリカバリーは、医療者が考えるゴールで、臨床的リカバリー(クリニカルリカバリー)と呼ばれるものです。これに対して、最近では障がい者の方自身が考えるゴール、パーソナルリカバリーが注目されています。
パーソナルリカバリーとは障がい者の方が希望する人生への到達を目指すプロセスで、中でも主観的リカバリーとは他者と関わり、将来への希望を持つこと等と言われています。

ここで、一つ大事な図をお見せしたいと思います。これは全国精神障がい者ネットワーク協議会による精神医療ユーザー約1000名に対して行われたアンケート結果をまとめたものです(放送内容資料をご覧ください)。
注目すべきは障がい者の方の「趣味や余暇を楽しむことができること」というニーズが年々高まっていることです。
私たちは、こうした患者さんの声に耳を傾けて、治療を考える必要があると思います。

12月5日放送内容(放送内容 資料はこちら

統合失調症患者さんの治療の中心は薬物療法ですので、まず自分にあったお薬に出会うことが大事です。

では、リカバリーに適した薬剤とはどのようなものでしょうか?
統合失調症患者さんの経過には、急性期、回復期、維持期があるといわれています。急性期には興奮や攻撃性、激越などの症状がみられますが、こうした時期は短期間ですので、主たる薬剤には陽性症状や認知機能障害、陰性症状に効果があるお薬を選択することが望ましいと思います。

さらに、最近ドパミンパーシャルアゴニストというお薬が登場しました。このお薬は、患者さんの「意欲」「楽しい」「何かをやりたい」という状態を維持する働きがあり、リカバリーを目指す上で望ましいと言われています。
その他にも、障がい者の方がリカバリーを目指す上で適した薬剤の特徴としては、服薬継続性が高く、生活の質(QOL)を向上する効果をもつ薬を使用することがポイントになります。
具体的な特徴については情報提供をさせていただきましたので、「放送内容 資料」をご参照いただければと思います。

いずれにしても、障がい者の方のリカバリーのためには、社会機能を回復し、人生の選択肢を広げることが出来るなど自分に合ったお薬と出会うことが必要です。そのためには、まず主治医の先生と今回のテーマについて良く相談されることが大事だと思います。是非次回の診察でお話してみてはいかがでしょうか?

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