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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

コロナ禍におけるメンタルヘルス

2022年3月3日放送2022年3月10日放送

2022年3月3日放送

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2022年3月10日放送

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2022年3月3日放送(放送内容 資料はこちら

2020年初頭より始まったCOVID-19パンデミック(ここではコロナ禍と呼びます)は今もまだ収束の兆しが見えません。コロナ禍は私たちに公衆衛生上の脅威のみならず経済活動を含む社会構造そのものに多大なインパクトを与え、人としての価値観や対人関係性の変化といった人間社会の基盤を根底から揺さぶる災害となりました。

感染症によるパンデミックはCBRNE:chemical, biological, radiological, nuclear, high-yield explosives(化学・生物・放射線物質・核・高性能爆発物)に起因する緊急事態を総称する特殊災害に位置付けられています。
地震、水害、台風等の一般的な自然災害に比して、五感で感知できず不確定な要素が多いため、不安や恐怖が強まりやすく、はるかに多くの社会的混乱を及ぼします。本邦におけるCBRNE災害は、地下鉄サリン事件(1995年)や、福島第一原子力発電所事故(2011年)などがあります。

私たちは意識的にせよ、無意識的にせよ、大なり小なりコロナ禍により心身的ストレスを長期間、慢性的に受けています。ストレスに対する強さ(レジリエンス)は人それぞれです。
このコロナ禍にうまく適応し、生活を快適に過ごしている方もおられます。一方でコロナ禍によって心身の失調を来たされている方々もおられます。
私たちは人それぞれの多様性を認めつつ社会全体として協力してコロナ禍に立ち向かっていく必要があるでしょう。

一般的にいえば、このコロナ禍に対して、私たちは不安や恐れ、否認や抑圧といった心理反応を示しながら適応と不適応を繰り返し、そして諦めや価値観の変化、生活スタイル変化を通じてゆっくりとこの新しい世界を受容し平穏な生活に戻っていくでしょう。

2022年3月10日放送(放送内容 資料はこちら

2020年の最初の緊急事態宣言が発出された時、多くの人が不安や緊張で不眠症状や抑うつ症状が強く見られたことが分かっています。それによって身体的な失調、頭痛や体の痛みなどを訴える人も多く見られました。これは自然のストレス反応です。特別に恐れることなく自分自身の変化を感じ取ることが大事だったと思います。

しかし、コロナ禍が長引くにつれて人との結びつきが減少し、一部の人には孤独が増しました。また経済的な不安は将来を絶望し、一過性の抑うつ症状からうつ病に発展したり、自殺行動の増加につながりました。
2020年度は前年に比べて年間の自殺者数が増加しました。特に女性や若年者に多く見られました。有名な芸能人の自死も影響を及ぼしましたと言われています。

COVID-19感染症は現在は治療法も出てきて、今後は飲み薬も現れて、普通のインフルエンザの様な流行性感冒になっていくかもしれません。
しかしまだ原因は明らかではありませんが、一部の人や高齢者の方には命に直結する重症の肺炎を引き起こします。そうした人とたちはCOVID-19から回復した後もうつやPTSD(心的外傷後ストレス障害)症状を引き起こすことが明らかになってきました。COVID-19感染症はその後のうつ病や不安障害を新しく発症させる割合を高かめることも報告されています。
ですから油断せずもし感染したら十分に休息して心配があればしっかりと治療を受けていきましょう。

コロナ禍は現在も続いています。不安や緊張と一時の解放を繰り返しつつ、私たちはこの世界を受容していくのでしょう。このコロナ禍をやり過ごすキーワードは「不確かさに対する寛容さ(受け入れていく)」です。
どうにもならない状況に陥ったときに、「どうにもならないんだ」「仕方ない」と思って、静かにできることを、日々の生活やルーチンを続けることが精神的衛生にいい結果をもたらすということが分かっています。
地震災害のような記念日がないコロナ禍では自分なりのコロナ克服記念日を作って明日からの生活を少しでも活力あるものにしていくのが良いのかもしれません。

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