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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)の実際/痔瘻(あな痔)の実際

2022年5月26日放送2022年6月2日放送

2022年5月26日放送

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2022年6月2日放送

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痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)の実際(放送内容 資料はこちら

「いぼ痔」と言われる痔核、「切れ痔」と言われる裂肛の原因、症状、治療についてお話しします。

まず、痔核についてです。痔核は日本人の21.6%から55%が罹患しているといわれています。リスクは慢性便秘や生活、食事の習慣などが大きな比率を占めています。

症状としては出血が主たるものですが、大きくなってくると脱出や痛みを伴い、生活に支障を来すようになります。
痔核の治療はまず、生活習慣のコントロールが重要です。食物繊維の多い食事、ノンカフェインの水分の摂取による排便習慣の改善が最も重要です。
薬物療法では軟膏、座薬がよく使われるのと同時に慢性便秘の方には排便のコントロールのための薬剤を処方します。出血のコントロールには局所の硬化療法が有効な場合があります。しかし、効果には限界があり、適応も限られているのが現状です。
手術療法は放送内容資料のイラストの右から2番目のIII度のよりも大きい痔核に対して適応になります。腰椎麻酔で行いますので入院加療が必要です。手術療法は再発率が0.25%と非常に低い優れた治療方法です。

次に裂肛についてです。裂肛は肛門の傷です。日本人の11.1%が罹患すると言われています。
原因は便秘や排便時の強いいきみ、また、過度な下痢も原因になります。
症状は痛みが主体です。出血はありますが少量であることが多いです。悪化すると肛門が狭くなり非常に強い痛みや排便困難が起こります。
裂肛の治療は排便習慣のコントロールに尽きるといっても過言ではありません。便秘、下痢をしないように食事や水分のコントロールをします。保存療法は軟膏や坐薬がありますが、食物繊維の摂取と温坐浴の方が有効です。
手術療法は主として肛門が狭くなった場合に適応になります。

痔核、裂肛は生活習慣、排便習慣のコントロールが非常に大切です。規則正しい生活を送っていただくことで予防していきましょう。

痔瘻(あな痔)の実際(放送内容 資料はこちら

今回は「あな痔」と呼ばれる痔瘻と、肛門周囲膿瘍についてお話しします。

肛門から2cmほど奥に肛門の皮膚と腸の粘膜の境界があり、その部分には肛門腺と呼ばれる粘液を分泌する部分があります。そこから便の中の細菌が入って膿がたまります。この膿がたまったところを膿瘍といいます。皮膚の下に膿瘍を作った状態が肛門周囲膿瘍です。これが自然に破れるか手術的に切開するかして排膿します、すると、肛門腺と膿が出た皮膚の部分がつながって痔瘻となります。

膿がたまる感染症ですので症状としては痛み、発赤、腫れが主体です。また、肛門の深い部分に膿がたまって排膿されないと高熱がでたり、不快感が出現したりします。

自然に排膿されると肛門周囲の皮膚から膿がでます。また、クローン病という腸に炎症を起こす病気に合併した痔瘻では、腸の炎症の症状が前面に出ることもあります。

痔瘻はトンネルの走り方によってI型からIV型に分類されます。単純で肛門周囲の筋肉を貫かないI型、一部の筋肉のみを貫くII型、大きく筋肉を貫くIII型、IV型や直腸側にトンネルが伸びていくタイプなど、多くの種類があります。

痔瘻の治療は基本的には手術しかありません。膿瘍を形成している場合には抗菌剤や切開手術で膿を出し切って炎症を抑え、その後に痔瘻根治術を行う必要があります。痔瘻は炎症を繰り返すと肛門の筋肉にも炎症が波及する可能性が高いことやがんの発生率が高いことが報告されています。

手術方法は数多くありますが、トンネルを開放する方法や括約筋を温存する方法など、根治性と機能性を考慮して手術を選択します。クローン病などの基礎疾患がある場合には痔瘻だけを手術しても根治が得られないため、排膿を主体とした治療を選択します。

肛門の三大疾患と呼ばれる痔核、裂肛、痔瘻ですが、唯一、痔瘻だけが悪性疾患との関連を指摘されています。痔瘻か?と疑った場合にはすぐに専門医に相談しましょう。

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