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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

脱毛症~円形脱毛症を中心に~

2022年6月9日放送2022年6月16日放送

2022年6月9日放送

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2022年6月16日放送

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2022年6月9日放送(放送内容 資料はこちら

円形脱毛症というと、「ストレス」を連想される方も多いかと思います。
確かに、「ストレスが原因で発症したのではないか?」と言われてご来院される方もいらっしゃいますが、「ストレスはあるけれどいつもと同じくらい」だとか、「抜けていることが1番のストレスだ」とおっしゃる方の方が多いです。

円形脱毛症は、自己免疫病という範疇の病気です。自己免疫病というのは、本来であれば外敵から自分を守ってくれるべき免疫が、自分の特定の臓器や組織を異物と誤って認識し、攻撃をしてしまう病気です。
自己免疫病には、いろいろな病気がありますが、1番有名な病気は関節リウマチではないでしょうか。リウマチは、自分の関節を異物と認識して攻撃してしまう免疫の病気で、円形脱毛症は、毛根を攻撃してしまう病気です。

また、円形脱毛症に対して、びまん性脱毛症という病態があります。円形ではなく、まんべんなく抜けるタイプの脱毛症です。
毛は、絶えず抜けたり生えたりを繰り返しています。数年かけて成長を続けた毛は、抜けて3か月程度のお休みに入り、その後成長を再開します。びまん性脱毛症は、この毛周期といわれるリズムが崩れてしまう病態です。
最近、新型コロナウイルス感染症後に発症する脱毛症の話題をしばしば耳にします。ある報告によると、コロナ感染後、約25%の患者さんが脱毛の後遺症を認め、その出現時期は、コロナ症状出現後平均58.6日、回復までに平均76.4日かかったとのことでした。この脱毛症も、びまん性脱毛症に分類されるケースが多いと思われます。

びまん性脱毛症は、これ以外にもいろいろな疾患や病態で起こりえます。甲状腺機能の異常や膠原病などの内科的疾患によるもの、栄養障害や薬剤によるもの、コロナウイルスに限らず、インフルエンザなどの熱性の疾患後などでもみられることもあります。
内科的疾患も考えられる場合には、血液検査を行うこともありますので、お近くの皮膚科専門医にご相談をしてみてください。

2022年6月16日放送(放送内容 資料はこちら

分類と治療についてのお話をします。

円形脱毛症というと、小さな円形の脱毛斑をイメージされる方が多いかと思いますが、そのようなタイプを「単発型」と分類します。それ以外に脱毛斑が複数個できる「多発型」、全頭に及ぶ「全頭型」、体毛も含めて抜ける「汎発型」に分類されます。
軽症のものでは、自然経過の中で3~4か月で軽快してしまうものもありますが、経過の長いものや、広範囲に及ぶものについては、積極的に治療した方がよいケースも多いかと思います。

治療については、現在は日本皮膚科学会でガイドラインが定められており、経過、範囲、年齢などを考えあわせて決定します。
毛根を攻撃する免疫の病気と考えますので、局所で暴走している免疫反応をコントロールするステロイド外用剤は、治療の基本になります。範囲は狭いのになかなか治りが悪いものには、ステロイドの局所注射を行うこともあります。
経過が長く、範囲が広いものについては、局所免疫療法という治療を選択する場合もあります。局所免疫療法は、SADBEという物質を使って、2週間に1回程度、定期的に頭皮をかぶれさせるというちょっと変わった治療です。SADBE療法と言ったり、かぶれの治療と言うこともあります。
起こすかぶれは、2週間に1回程度、日常生活には影響のない程度に数日起こすイメージです。ステロイド療法が悪さをしている免疫反応を抑えるというのに対して、局所免疫療法は悪さをしている免疫を調整するというイメージになります。60~70%の有効率といわれています。

円形脱毛症は、一般的に、発症してから進行するのははやいのに、治すのには時間がかかる病気ですので、主治医とのコミュニケーションを大切にして治療を進めていくとよいと思います。

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