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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

大腿骨近位部骨折

2023年2月16日放送2023年2月23日放送

2023年2月16日放送

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2023年2月23日放送

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疫学・危険因子について(放送内容 資料はこちら

始めに

大腿骨近位部骨折という、高齢者に多い、太ももの付け根の骨折についてお話します。
65歳以上の人口割合である高齢化率は2021年で28.9%となっており、今後も増加が予想されています。平均寿命(2019年)は男性81.4歳女性87.4歳、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である健康寿命との差は男性で約9年女性約12年です。
国民生活基礎調査(2019年)では要介護となる主な原因の4位は骨折・転倒となっています。大腿骨近位部骨折は要介護の原因となる代表的な骨折の一つなのです。

大腿骨近位部骨折の疫学

日本の大腿骨近位部骨折の年間発生数は2012年では約17.5万例で、男性が約3.7万例、女性が約13.8万例になります。発生率は40歳から年齢とともに上昇し、70歳を過ぎると急激に上昇します。
将来人口推計によれば65歳以上の人口は2030年には約3,700万人に達し、大腿骨近位部骨折の年間新規患者数は、2030年には29万人に達すると予想がされています。

若い世代での大腿骨近位部骨折では、高所からの転落や激しい交通事故などの高エネルギー外傷でおきますが、高齢者における大腿骨近位部骨折ではその約70%は立った高さからの転倒でおきています。自宅内転倒で発生するケースも多く、日常生活の中でおきる骨折です。

大腿骨近位部骨折の危険因子

大腿骨近位部骨折を起こしやすい条件としては、骨の密度が低くもろくなっている骨粗鬆症であること・ご両親のどちらかが大腿骨近位部骨折をしたことがある・糖尿病や肺や腎臓が悪い・転ぶことが多いなどが報告されております。また、大腿骨近位部骨折後も骨折リスクは高く、反対側の大腿骨を骨折するリスクは約6~9倍上昇し、また3年以内に約80%が次の骨折を起こしている報告もあります。そのため大腿骨近位部骨折前後の予防が重要になります。

予防について(放送内容 資料はこちら

大腿骨頸部骨折の予防についてお話します。
紹介する予防方法は①薬物療法、②転倒予防になります。

①薬物療法

薬物療法については骨粗鬆症治療で使用されている薬剤の一部に大腿骨近位部骨折の予防効果があります。
大腿骨近位部骨折の予防に有効な経口薬は、ビスホスホネート薬であるアレンドロン酸とリセドロン酸の2剤で、有効な注射薬は,ビスホスホネート薬であるゾレドロン酸、テリパラチド、抗RANKL抗体であるデノスマブ、およびヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体であるロモソズマブの4剤になります。

骨粗鬆症の有病率は60歳代女性で約30%、70歳代女性で40%弱に達するといわれており、高齢者女性では骨粗鬆症の健診をうけることをお勧めします。

②転倒予防

大腿骨近位部骨折の受傷原因の約7割が転倒であり、骨折の予防に重要です。日本の在宅高齢者の転倒頻度は約10~20%程度とされ、75歳以上となるとさらに転倒頻度は上昇します。また転倒した高齢者の約10%が何らかの骨折を生じ、全骨折の10%未満が大腿骨近位部骨折と考えられており、転倒した高齢者の1%が大腿骨近位部骨折を起こしていると推定されています。

運動療法による大腿骨近位部骨折の予防効果は証明されているわけではありませんが、在宅高齢者において骨折の原因となる転倒率や転倒数をともに減少させ有用であると考えられています。

住環境改善は転倒数と転倒者数ともに予防効果があります。住宅内においてはリビングや玄関で転倒する事が多く、段差や障害物の除去・明るさの確保・手すりの設置などで対応します。

2回のまとめとして大腿骨近位部骨折は高齢者において介護の原因となる骨折であり、今後もその骨折者数は増加する見込みです。自宅内転倒などの軽微な外傷で骨折するケースが多く、運動や住環境の整備による転倒予防や骨粗鬆症の場合は薬物加療が骨折リスクの軽減に役立ちます。また、大腿骨近位部骨折の治療後は次の骨折予防のために骨粗鬆症の治療を行うことをお勧めします。

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