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ラジオ番組 みんなの健康ラジオ

強迫症

2023年4月13日放送2023年4月20日放送

2023年4月13日放送

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2023年4月20日放送

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強迫性障害のおはなし(放送内容 資料はこちら

新型コロナウイルスが蔓延して以降、新しい生活様式がかなり板について、コロナ以前の生活はあまり考えられなくなっている気がします。いまでも大概の人は、外出時はマスクをして、入店の際はアルコール消毒をし、検温をして、対人距離をたもって過ごしております。それが今の日本では普通のエチケットでなんら奇異な印象は受けませんが、5年前だったらどう思われたでしょう。

風邪をひいているわけでもないのにマスクをして、アルコール消毒薬を持ち歩き、何かを触るたびに消毒している。なにか病気があるのではないかなと奇異な視線を向けられていたことと思います。

強迫症という病気があります。強迫観念と、強迫行為で構成される病気です。
これがコロナ時代で増えているのではないかと考えられます。「感染するのではないか」という強迫観念、これを打ち消すために繰り返し手を洗う、頻繁に消毒する強迫行為。感染恐怖や、それを予防する消毒、手洗いは、特に新型コロナウイルスの出始めのころは皆さんが感じていた恐怖であり、それは理解可能なものです。

ですが、その症状により、時間を浪費して日常生活に支障が生じて、本人が強い苦痛を感じたり社会生活に影響を及ぼす場合は病気と呼んで良いと思います。
強迫症の症状がひどい場合は、1日何時間も手を洗い続け月の水道代が数万円を超えてしまったり、手がガサガサになって、感染しやすくなってしまいます。不潔恐怖の症状が強いとピンポイントに拘りすぎて、入浴も時間がかかるようになって、かえって不潔になってしまうという本末転倒なことがよく見られます。

昔は強迫症と診断する上で「本人がその症状をばかばかしいと感じている」「不合理と感じている」ということが必須でしたが、最近の診断基準では、不合理と感じるか感じないかは問わないことになっております。
強迫症状も不安を打ち消すために繰り返すというパターンと、「まさにぴったり感」を追求するあまり同じ行動を繰り返すというパターンがあり、治療戦略も異なります。

強迫性障害の治療(放送内容 資料はこちら

薬物療法と、認知行動療法を組み合わせて治療します。
薬物療法としてはSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)という抗うつ薬の有効性が示されていますが、薬物だけで改善する割合はせいぜい3割程度と思われます。一般にうつ病に用いるよりも高用量で用いることが多いです。抗うつ薬は単回で効果が出るものではなく、増量してから2~4週程度かかって効いてくるものですので、副作用に注意しながら継続して有効性を評価することが重要です。

認知行動療法は暴露反応妨害法という方法を用いることが一般的です。
行動療法の導入の前には行動分析といって、1日の中でどういう場面で不安が生じて、強迫行為をしてしまうのかという正確な症状の把握が大事です。患者さんに用紙を渡して、まずは症状の出る時間、タイミングを正確に記載してもらいます。また症状による日常や社会生活への影響はどの程度かを明確にして治療目標を具体的に決めます。

治療の基本原理として、「不安になる」→「強迫行為をする」→「不安が一時的に下がる」→「また不安になる」→「強迫行為をする」という無限ループによって強迫症状が悪化してゆくことを図で示し、「不安は放っておくことで下がってくる」、「ピークアウトする感覚をつかむ」ということを繰り返し教示し、不安になっても強迫行為をしないで放っておくようにします。不安の階層表を作って、取り組みやすいところから取り組んで段階的に強迫症状ゼロを目指してゆきます。

認知行動療法は有効性は示されているのですが、治療に時間がかかることなどが原因で国内では十分広まっていないのが現状です。当院は赤十字という公益性をもった病院の使命として、強迫症の認知行動療法専門外来を開設して治療にあたっておりますので、強迫症状があって、薬物療法の反応が十分得られない患者さんがいれば、主治医の先生を通してご紹介いただければと思います。

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