会員専用ページ会員専用ページのご案内
文字の大きさ

スポーツ医学 Q&A

Q:健康づくりで「一日に1万歩歩きましょう」とよく聞きます。また「健康横浜21」でも8000~9000歩を奨励しています。実際にはどのようにしたらいいのでしょうか。
A:「歩きましょう」は簡単な言葉ですが、重要かつ大切なことです。自分の健康のためにも始めた水曜ウォークも6年半が過ぎ、延べ5018人が参加した。安全性を確保し、効果を評価できるように、継続を重視してきたので紹介します。
当院患者を主体に参加を希望される方である。初回は手首血圧計を装着し、心肺機能の指標であるダブルプロダクト(DP)を測定した。DPは最大血圧X脈拍数の積で表され、心肺機能の良し悪しの指標になる。毎週水曜日午後、地域の坂道・階段のあるコースを歩き、飲水休憩・ストレッチ・筋力トレーニングを含む90分のプログラムを実施した。体力測定は年2回、文部科学省スポーツ・青少年局の新体力テストのうち長座位体前屈、10m障害物歩行を屋外でどこでもできるように改変した方法で実施した。
多くの人はDPは約12000で、登坂、階段をのぼった直後では役17000であった。DPが20000以上になると本人も「きつい」と訴えがある。本人に心肺機能の結果を伝え加減するように自己調節を促す。地域の公園で、参加者同士2人ペアを作り、上体起こし、立位体前屈、片足立ち、ジグザグ歩行、6分間歩を測定する。結果は体力の低下のないことを確認することが主で、特に体力向上することを望んでいるわけではない。こうすると、屋外でもDP測定により容易に運動強度を知ることができる。そして体力の個人差に対応もできる。屋外で指導者がいなくても体力測定ができ、全国の平均値と比較が可能である。費用がかからず、安全で、どこでもでき、体力評価もできる健康なウォーキングが可能となります。
(田中医院 田中 一男)
Q:オリンピックなどの際にドーピングによる失格などの報道がありますが、「ドーピング」とはどんなことですか?
A:「ドーピング」とは「競技能力をたかめる薬物などを使用する。」ことであり、これを禁止する理由としては、
  1. 選手自身の健康を害するため。
  2. フェアープレイに反する。
  3. 反社会的行為である。
  4. スポーツ固有の価値を損ねる。
をWADA(世界アンチ・ドーピング機構)が挙げられています。
Q:どんな薬物が禁止されているのですか?
A:
  1. 競技能力が強化されるもの、またその可能性があるもの。
  2. 健康上の危険性を及ぼすもの、またはその可能性があるもの。
  3. スポーツ精神に反するとWADAが判断していること。
上記のうち2つを満たしているとWADAが判断した場合、及び「その物質又は方法によって、他の物質・禁止方法の使用が隠れてしまう可能性があると、WADAが判断した場合」とされており、一般に筋肉増強剤、興奮剤、麻薬、利尿剤などがあります。
Q:昔、夏になると「日射病に注意しましょう」とよく言われました。最近夏でもないのに「熱中症」で死亡とかスポーツ、練習で意識がなくなったという記事をよくみます。どのようなことに注意したらよいのでしょうか。
A:高温や多湿の環境下で起こる全身の暑熱障害を総称して「熱中症」といいます。一般的には、程度、症状により熱痙攣(筋肉痛、失神、日射病など)熱疲労(嘔気、嘔吐、虚脱感など)そして熱射病(意識障害、ショック症状など)に分けられます。
「神奈川県医師会健康スポーツ医部会」でまとめられた資料(下記)がありますのでご参照下さい。
神奈川県医師会健康スポーツ医会「熱中症」(659KB)
Q:野球チームに所属する息子がいます。練習後に時々肘の痛みを訴えるのですが放置してよいのでしょうか?投球で支障がないようですので、成長痛のようなものと考えて様子をみてもよいのかアドバイスをいただければ幸いです。
A:子供の体にスポーツの際生じる痛みは、たとえ小さいものでも軽視してはいけません。なぜならば痛みは体の状態を教える信号であり、これを無視すればケガや障害につながる可能性があるからです。スポーツは心身の発達や病気の治療に有効なものですが、その仕方を間違えると危険なものとなります。
現在ジュニアスポーツにおいて、このことが非常に深刻な問題となっており、私のクリニックでも何らかの障害を抱えて泣いている子供の受診が後を絶ちません。その中でも野球による肘の障害(野球肘)は子供の夢と将来に悪影響をあたえる代表的な障害であることを認識して下さい。ボールを上から投げようとする際肘の内側(小指側)には引っ張る力が、外側(親指側)には圧迫する力が働きます。そしてこのストレスが子供の肘に繰り返される結果、肘の内側にある骨や靭帯が引き裂かれたり、外側の関節軟骨や骨が壊されてしまうケガが発生する、これが野球肘です。
関節軟骨は再生能力の乏しい組織のため、野球に限らず人生に影響する障害になりうるものと考えてください。そして必要なのは早期発見です。野球肘初期の症状は投球時や投球後の一時的な痛みであり、投球可能であることがほとんどです。この時期に発見できれば約3ヵ月の投球禁止で完治可能できますが、進行すると手術療法でも完治は困難と考えてください。
よって息子さんの症状も決して無視せず整形外科やスポーツ医を受診することをお勧めします。スポーツ障害の早期発見や防止には指導者や保護者の協力が不可欠であることを理解してください。
Q:最近高齢者でも筋力トレーニングが必要と聞きます。私も高齢者の仲間入りをしましたが、普段殆どスポーツをしていません、どうしたらよいでしょうか?(67才、男、青葉区在住)
A:昔は筋力をつけることは若者がやることと考えておりました。しかしながら最近高齢者でも筋力トレーニングをすれば筋力は向上することがわかってきました。一般には40歳を境に柔軟性、持続力、筋力、体力、予備能力などは急速に落ちます。そこで普段スポーツをやられていない場合は、「はりきって急に運動しましょう」「筋トレをしましょう」は危険です。高齢者は体力低下を含めて、多くの病気を抱えていることがあります。健康スポーツ医、かかりつけ医に相談してみましょう。
筋トレの目的は何でしょう。筋肉マンになることですか。物が沢山持てるようになる、ゴルフのスコアが上がればという事ですか。介護保険でも運動器の機能向上として、転倒予防、寝たきり防止、廃用症候群予防策の一環として行ないます。バランスよく身体を動かせる、立てる、歩ける、痛みもない。そして自立できる身体づくりをすることです。体幹機能、バランス機能を確保する事が重要であり、結果として自分自身の生活の幅が広がり、自信を持って行動できるための筋力トレーニングであります。
高齢者では個人差が大きいので、競争しない、無理をしない事です。マシン(機器)だけが全てではありません。いろいろな方法がありますので、自宅でもできるトレーニング方法を学び、毎日、少しずつ、継続できるような運動、身体の動かし方を反復することが必要でしょう。健康スポーツ医、かかりつけ医に相談しながら進めましょう。