横浜スポーツ医会創立20周年記念講演会
日時:平成17年10月15日
場所:関内新井ホール
日時:平成17年10月15日
場所:関内新井ホール
横浜市スポーツ医科学センター センター長 村山 正博
スポーツ医学はトップアスリートの競技力向上・健康管理から一般国民の健康づくりまで果たす役割の範囲は広いが、近年、高齢者社会の到来を迎えて後者の比重が大きくなっている。しかし一般の人の中でスポーツが健康に良いということを漠然と理解しても「どうしてか」から「何を」、「どの程度」行なえば良いかまでを理解している人は意外に少ない。
1)医科学センターは1997年に①競技力の向上②市民の健康づくり③スポーツの振興を目的に設立されたが、昨今設立当初とは変化し、健康スポーツの重要性が大きくなり、市民対象のスポーツ振興及びその支援事業として8割、トップレベル競技選手クラスを2割で事業展開を目標としている
2)医科学センターは①区スポーツセンター利用者の医科学的相談及び健康づくり相談の受け皿②スポーツ障害診療の受け皿③スポーツ医科学、救急処置などに関するスポーツ指導員の教育④スポーツ医科学に関する情報センターとしての役割になるが、さらに現在すすんでいる区のスポーツ支援センター構想における連携事業や介護予防事業における役割などが新しい事業構想として考えられている。
3)健康づくり教育として「スポ医科健康塾」を開催し、「何のための健康づくりか」「何のためのスポーツか」「健康づくりを始めるに当たって知っておく基礎知識」「中高年の病気に関する基礎知識」などをお話しし改めて「何のためにスポーツするか」を考え、①競技力をつける②単に楽しめれば良い③特別な病気はないが、予防のために行う④既に何らかの病気や検査上の異常があるのでその改善のために行なう等どれに該当するかを自分で決めた上でスポーツの選択、方法を考えるのが良いことを話し、「健康スポーツ医」がその手伝いをする旨を話しているという
4)スポーツの医療経済改善への貢献
スポーツの疾病予防・治療における有効性が示され、医療への積極的貢献が期待されており、さまざまな地域で運動療法の介入で医療費の削減、経済効果が実証されていることの内容を話された。
ご講演より医科学センターの役割、地域でのセンター等の役割そして、健康スポーツ医の役割、医師会の役割そして「健康横浜21」の行政の役割等々がお互いの位置付けの上で連携して市民の健康づくりの啓発並びに実践に貢献するべき時代であると熱く語られました。
東京大学名誉教授 黒田 善雄
近年、オリンピック大会が間近になると種々な新しいドーピング薬物の情報が流れる。
1995年アトランタ大会の前年には、それまでなかった新しい構造をもつブロマンタンの検出が分析機関に通報された。
2002年のソルトレイク冬季大会からEPO検出が正式に行われることになると、前年の2001年にはより強力なダーボホイエチンがアメリカで開発された。
そして、昨年(2004年)のアテネ大会の前年、2003年秋には、カリフォルニアのベイ・エリア研究所でか開発され、2000年頃から同社と契約した、アメリカの野球大リーグの選手、陸上競技選手、水泳などのトップアスリートにひそかに供給されていた筋肉増強剤テトラハドロゲステロン(THG)が大きな話題となった。THGはすでに禁止リストにあるゲストロノンの構造を一部改変し、検出されなくした、誠に意図的につくられたドーピング薬物である。
時を同じくして、1999年シドニー大会の前年に、ドーピング検査で陽性だったアメリカの陸上競技選手の結果をかくしてシドニー大会に参加させ、金メダルをとった選手のことを米国陸連が3年以上もかくしていたことが判明した。さらにアメリカオリンピック委員会のスタッフによる内部告発により、1980年代後半から陸上競技の有名選手を含む100名以上の選手が、国内のドーピング検査で陽性であったにもかかわらず、19名の選手がオリンピック大会でメダリストになっていると言われている。
これが、スポーツ大国のアメリカの実情とすれば、オリンピックどころではない。現在大統領府、同法局、FDA、U.S.A.アンチドーピング機構などが調査、対策に乗り出している。
この様なアメリカの現状において、世界のスポーツ界はどうなるのであろうか。
アテネオリンピック大会では、残念ながらオリンピック史上最多ドーピング陽性者(男子5名、女子7名)を出し、その他に男子3名の採尿拒否などによるドーピング規則違反、ギリシャの2名(男女各1名)のメダル候補者がドーピング検査不能で代表選手からはずされる事態に招いた。
また、プロスポーツ界においてもドーピングが想像をこえる状況にあるのも事実である。
オリンピック大会はそしてスポーツ界はどこに行くのであろうか。それは末期的状況にあるといえる。