現場でのトレーナー活動
国立スポーツ科学センター アスレティックトレーナー 松田 直樹
スポーツ現場での実際のトレーナー活動としての、最も大切なことは「いかに良いコンディションで選手たちがたたかいに臨めるか?」ということである。今回は実際のチームでのトレーナーサポートを「日本代表チーム」と「日本選手団」を例にとって紹介する。
1.アイスホッケー女子日本代表での活動
バンクーバーまでの強化
- パッシブケアではなく、勝つためのフィジカル強化を優先。
- 所属チームでもコンディションの維持ができるように、セルフケアの指導
- 定期的なフィジカルテストの実施と、映像を用いたトレーニングの遠隔指導
2.アテネ五輪日本選手団本部でのトレーナーサポート
たくさんの競技が集る日本選手団本部としては、
- ① 各競技団体(NF)への情報提供、
- ② 各競技メディカルへの後方支援、
- ③ メディカルサポートが手薄なNFへの直接的メディカルサポート、
- ④ 各競技での医学情報の収集
アテネ五輪ではJISS開設後の五輪であり、選手も派遣前からJISSで面識のある選手も多く気軽に選手たちはメディカルルームを利用することができた(シドニー大会比約300%)
3.トレーナーとしての外傷評価
- ア)ピッチ内で「SALTAPS」イングランドサッカー協会
S:See(見る)ベンチからのモニタリング
A:Ask(尋ねる=問診)「どこが痛いのか」「どのようにケガが起きた?」
L:Look(診る:視診)腫脹や変形など客観的情報としての解剖学的構造の確認と、様々なサインと徴候を探り出す。
T:Touch(触る:触診)腫脹や変形など客観的情報としての解剖学的構造の確認と、様々なサインと徴候を探り出す。
A:Active Range of Motion(自動可動域):「自分で動かせるか?」その際に附随する症状があるか
S:Strength(筋力):「痛みなく力が入るか?」「競技続行に十分な筋力があるか?」 - イ)ピッチ外で
Functional/specificity test - ウ)試合復帰困難な場合 HOPS
H(History)→主観的情報の収集 受傷部位、受傷機転、外傷要因などの把握
O(Observation)→観察・視診
P(Special functioning test)→整形外科的機能テスト
これらの状況から総合的に判断して「応急処置法」「固定」「搬送方法」などを考える。
4.外傷の予防活動
非接触型の外傷では、運動時の姿勢やアライメントが大きな影響を及ぼす。例えば膝関節の外傷でも、その受傷機転となりうる不良アライメントに導く原因は当該関節の静的アライメントなどに加え、その上下の関節などから連鎖する姿勢変化に原因があることも多くみられる。
とくに、体幹・股関節周囲の機能的問題は、膝や足関節だけでなく肩などの上肢の関節の運動にも大きな影響をあたえる。股関節機能のトレーニングは「非荷重」「荷重・バランス系」「スタビリティ系」トレーニングなどを満遍なく行っていくことが重要である。体幹トレーニングもただ単に腹直筋機能だけではなく、様々な方向の動きに対応できるように競技形態にあった多種目の体幹トレーニングを実施していくことがパフォーマンス改善にもつながる。